リーダー教育にスポーツ現場を
50歳の川原さんも元ラガー。外務省の医務官としてスーダンに赴任し、39歳の2005年、現地で地元の人々への医療活動を徹底するために外務省を辞めた。今は現地に深く溶け込み、巡回診療だけでなく、小学校設立や水道管浄化事業などさまざまな社会貢献活動も行っている。川原さんの志とは、いわば「博愛」である。ただ「困っている人を助けたい」「共に生きる」ということなのだろう。
川原さんは、スバ抜けた行動力を持つ。「もう猪突猛進。恥ずかしい限りです」と笑う。
「これまでは、自分がまずやって、“みんな、ついてこい”みたいのが多かったですね。でも、ちょっと今、自分のスタイルに壁を感じています。ラグビーと同じような感じでぶち当たってやろう、というだけでは難しいですよ。広瀬さんを見習って、理論的に戦術を立てて、だからこう攻めなきゃいけないということをしないといけないのだと50(歳)にしてようやく学びました」
ふたりがともに賛同したのが、リーダー教育の必要性だった。川原さんはその教育の場としてスポーツ現場を持ち出し、「ラグビーに限らず、サッカーでもバレーボールでも、いろんなレベルがあるけど、それぞれの目標に向かって、戦力やスキルを高めていく。結果が必ず出る。そうやってスポーツで培ったものが実社会でもおそらく生きてくる。リーダーを育てていく場じゃないかなと思います」と言葉に実感を込めた。
広瀬さんは現役を引退し、ラグビーの選手会を立ち上げた。川原さんはスーダンに診療所を造り、医療活動の充実にまい進しようとしている。広瀬さんはキャプテンとしての指導力を極めてスポーツの価値を高め、川原さんは医療活動のリーダーとして国際交流と尊い人命を守ろうと努めているのである。