高温の炎の色に
スポーツには物語がある。用具にもまた、物語が紡がれる。リオデジャネイロ五輪で金メダルを目指す全日本女子バレーボールチームのシューズとユニフォームがことし、ブルーに変わった。なぜ。愛称「火の鳥NIPPON」のストーリーから、炎がもっとも高温になったときの色が青だから、なのである。
「大きな変革を起こしたい」。女子日本代表がロンドン五輪で銅メダルを獲得した翌年の2013年春、日本バレーボール協会のオフィシャルサプライヤーのスポーツ用品メーカー「ミズノ」のバレーボール担当、グローバルフットウエアプロダクト本部企画デザイン部の芹澤剛さんはそう考え、女子日本代表の眞鍋政義監督と会った。姫路市のホテルのロビーの片隅。新シューズのサンプルとプレゼン資料を持って。
「ほぼアポなしの直談判でした。バレーは人気があるようで、まだまだ実績に比べ、認知度が低かった。もっと盛り上がるお手伝いをしたいと思ったのです。“一般の人にインパクトを与えるため、それまで白ベースだった全日本のシューズのカラーを全部変えましょう”、そうご提案させてもらいました」
眞鍋監督の顔色がパッと明るくなって、「ぜひ、やろう」と乗ってきた。監督自身、挑戦意欲のかたまりのような人である。しかも人気アップをいつも、考えている。そのとき、芹澤さんが提示した赤色のサンプルシューズに眞鍋監督は何度もうなずいた。
赤色は、火の鳥の炎にちなんだ赤だった。加えて、芹澤さんが説明する。
「最初の提案でしたので、受け入れてもらいやすいよう、日本チームがずっとユニフォームに使ってきた“日の丸カラー”の赤色とさせてもらったのです。いきなり、オレンジや黄緑だと……。火の鳥の赤、日の丸の赤なら、わかりやすいのではないかと」
もちろん、ミズノの企画プランにはビジネスの側面もあった。ロンドン五輪の銅メダルに沸いた2012年度、「シューズの売り上げにはまったくといっていいほど影響は出ていなかった」という。サッカーなどと比べると、足元はテレビに映りにくい。露出されないと、視聴者(消費者)は気がつかない。ならば、目立つようにカラフルにするしかない、と芹澤さんは考えた。