眞鍋政義(バレーボール・日本代表女子監督)

まなべ・まさよし 1963年、兵庫県生まれ。大阪商業大学附属高でインターハイ優勝。大阪商業大時代にユニバーシアード優勝。85~2002年、日本代表。88年、ソウル五輪出場。99年、イタリア・セリエAのパレルモに移籍。2004年、大阪体育大学大学院で修士号取得。05年、久光製薬スプリングス監督に就任。08年12月、全日本女子バレーボール代表監督。

勝負の年である。4月。ロンドン五輪に向けた女子バレーボールの日本代表の強化合宿がスタートした。監督就任4年目。眞鍋政義監督が記者会見で力強く抱負を口にした。「まずは五輪世界最終予選で1位通過する。五輪本番では金メダルに挑戦したい」と。

真鍋監督は48歳。大阪商業大学から新日鉄(現堺ブレイザーズ)に進み、日本代表のセッターとして活躍した。イタリア・セリエAのクラブチームにも挑戦し、旭化成、松下電器でもプレーした。41歳のときに引退。女子プレミアリーグの久光製薬の監督を経て、日本代表の監督に就任した。

ソフトな印象にだまされてはならない。データーを駆使しながらも、最後は「ハートで勝負」と言い切る熱血漢である。「団結」を強みとし、エースの木村沙織、主将の荒木絵里香、いぶし銀の竹下佳江らをその気にさせ、チーム力を強化してきた。一昨年の世界選手権では3位と健闘し、「世界一」への階段を一歩ずつ着実に登ってきている。

北京五輪の翌年の就任直後、眞鍋監督は「ロンドン五輪でメダルを獲得する」と選手たちに宣言した。とくに2004年アテネ五輪、08年北京五輪出場の木村をエースと位置付けた。眞鍋監督は木村にこう、言った。「おまえがエースだ。ロンドンでメダルを獲るためには、階段を3つ上がらないといけない」と。さらにまず発言しろ、と。

木村は天才型。言葉でなく、プレーで引っ張るタイプである。でも指揮官は、真のエースたるもの、言葉とプレーでチームをリードするのだと言った。「発言して間違ってもいい。とにかくエースの自覚を持て」と。

眞鍋監督は昨年、1対1のミーティングで木村にこう言った。「世界一のスパイカーになれ。それがジャパンが金メダルを獲る一番の近道だ」と。

眞鍋監督はエースの成長に賭けている。木村ならできる、と踏んでいるからである。現役のセッター時代から、まず人の力量を見る眼力が外れたことはない。
 

(坂本 清=撮影)