中野浩一(JKA特別顧問)

なかの・こういち 1955年、福岡県生まれ。福岡県立八女工業高校卒。競輪学校35期生。75年、競輪選手デビュー。76年、新人王。80年、日本プロスポーツ界初の年間賞金1億円突破。77~86年、自転車世界選手権(プロスプリント種目)で10年間連続チャンピオン。92年、引退。4月24日、ガールズケイリン記者発表会にて(左は中村由香里選手、右は当日のゲスト橋本聖子参議院議員)。

待ちに待った女子競輪の「ガールズケイリン」が7月、いよいよスタートする。その記者発表会。司会を務めたのが、伝説の競輪選手、中野浩一だった。56歳。JKA(元日本自転車振興会)の特別顧問である。

ガールズケイリンの誕生の過程もつぶさに見てきた。昨年5月、女子生徒が日本競輪学校に入学する際は「どうなることかと心配した」と漏らす。だが1年間の鍛練を経て、33人の生徒たちはたくましく変貌した。「ある程度、カタチにはなったかな」と言う。

もちろん、男子と比べると、スピード感はまだ足りない。ファンが車券を買う賭け事として盛り上がるかどうかは、それぞれがプロの自覚を持ち、いかに厳しい練習を積んでいくかにかかっている。全体のレベルを上げていくしかあるまい。

現役時代、練習のモチベーションのひとつは賞金だった。世界選手権個人スプリント10連覇の偉業を達成する一方、KEIRINグランプリなど特別競輪12勝をマークした。獲得賞金総額は13億円を超え、「ミスター競輪」としての人気も沸騰した。

強さのヒミツは猛練習にあった。「プロなのだから、個々でどのくらい練習できるかが問題となる。そこで差がつく。素質があっても、練習しないと強くはなれない。最終的には競争なので、意欲のあるやつが強くなっていく」

スポーツだもの、選手は高いレベルで戦えば戦うほど、強くなっていく。「だから、世界に目を向けたヤツが最終的にはいいカタチで勝てることになる」と言い切る。「世界で勝てば、日本でも勝てる。自信にもなる。それってスポーツではものすごく大きいじゃないですか」と言葉を足す。

賞金はトップ選手だと年間2000万円ぐらいはいきそうだ。「やりがいあるでしょ。一所懸命やって勝てば大金が入るわけだから。モチベーションが上がる。練習にも身が入る」。伝説のミスター競輪はそう言って、女子選手たちの奮起を促すのだった。
 

(松瀬 学=文&撮影)