やり方を押し付けるヘボリーダー

野球などスポーツを観戦するうちに「違う! 自分ならこう指揮したのに」と苦々しく思われた経験がある方も多いのではないだろうか。あるいは、政界人事を見て「駒の動かし方が間違っている!」と舌を打つこともあるかもしれない。

たとえば野球雑誌のサイトを眺めてみると、星野仙一監督は「恐怖で動かすタイプ」であり、この手の監督がいると周りがピリピリするとしている。「情で動かすタイプ」が三原脩監督で、「理で動かす」のが厳しいながらも人間教育を重んじた巨人V9監督の川上哲治氏とあった。野村克也監督の言葉を借りると「自分の野球を押し付けるのはヘボコーチ」だそうだ。いろんなリーダー像が見られるが、自分が指揮する立場(や気分)になったときを考えてみると、どのような指揮が自分にあっていて、どんな指導が相手に効果的だろう。

指揮者イタイ・タルガム氏の「偉大な指揮者に学ぶリーダーシップ」という秀逸なプレゼンがある。有名な指揮者を例にあげて、そのリードぶりを比べていくものだ。交響楽団という音楽のプロ集団を前に、指揮者がタクト1本でそれぞれの演奏を引き出してまとめ、ひとつのハーモニーをつくり出す。

ある指揮者は、自分が理解する音楽の通りの演奏を奏者たちに強いる。楽団と観客の前で指揮棒を振るが、その通りに相手が動かないと、指揮棒を横にして“首を切る”風の仕草で威圧する圧政ぶり。これは大御所ムーティという指揮者だが、彼には楽団員から「やめて欲しい」という手紙が届いたという。その理由はこうだ……。