スポーツテクノロジーを駆使して開発されたアウトドア衣料を、アウトドア以外の場所で目にする機会が増えてきた。旅行用として、近場のハイキング用やお散歩用の服として、ときには通勤用の服として、速乾性や吸汗性に優れたインナーウエアやTシャツ、防水性や防風性の高いジャケットは幅広いシーンで引っ張りだこだ。
背景にあるのは、アウトドアメーカーの変貌だ。各メーカーとも女性需要を獲得しようと女性専用サイズを投入し、マーケティングにも力を注ぐ。
ザ・ノース・フェイスブランドを日本で展開するゴールドウインは、昨年から企画チームに女性を登用。「体の線を隠しつつ美しく見せたい」という女性の繊細で複雑な要望に応える商品開発を進めている。コロンビアスポーツは、日本独自仕様としてボーダーや柄物を増やし、昨年の女性用衣料の売り上げは前年比20%増を達成した。普段の生活を快適に過ごせるアイテムとしてトラベルラインを強化しているのは、フランスのラフマだ。
百貨店も動き始めた。半年前の2009年9月にスポーツファッション売り場「ハルクスポーツ」を2フロアから3フロア展開へと拡大した小田急百貨店新宿店では、この4月7日から「トラベルコレクションフェア」を開催。スポーツ売り場に並ぶアイテムを組み合わせ、旅行用として提案したフェアは百貨店業界初の試みだ。「百貨店のアパレル売り場がよく実施しているトラベルコレクションは成功した試しがない。お客様が求めているのは、単なるスポーツテイストではなく、ゴアテックスなど本格的な機能です」と話すのはスポーツファッションバイヤーの福山統さん。機能が高く、デザインもよければ鬼に金棒。旅行用の洋服選びはスポーツ売り場で――。そんな時代がやってきた!?
※イベントは雑誌掲載当時
(撮影=向井 渉)