人には同じ24時間しかないのに、なぜ仕事の進み具合に差が出るのだろう。成果を挙げる人たちの話を聞いてみると、業界は違っても、段取りに対する共通の意識が見えてきた。

超VIPを待たせるのはご法度です

漫画やドラマの執事は、礼儀正しく穏やかにご主人様の希望を聞き、ゆったり構えているのが通り相場。ところが実際の執事は、「超」がつくほど多忙な職業である。

「私どものお客様は、大富豪らしい独特の感性をお持ちで、ライフスタイルもかなり特殊です。その方々のご要望に可能なかぎりお応えするのが私どもバトラーの仕事。どんな無理難題にも即座に対応するために、日頃の準備と段取りは欠かせません」

そう話すのは、日本バトラー&コンシェルジュ代表の新井直之さん。人気映画で俳優の所作指導も担当したプロ執事だ。

「執事が顔を知られるのはセキュリティ上NG」日本バトラー&コンシェルジュ代表取締役社長 新井直之氏

新井さんの会社にバトラーサービスを依頼するのは資産50億円以上、年収5億円以上の大富豪たち。なかには世界の資産家ベストテンに入る海外の大富豪もいる。そんな超VIPは、日本に来る日時も前もって教えてもらえないという。

「何日に来ると事前連絡があっても予定変更は当たり前。誘拐やテロが心配で曖昧にされるのです。本国の秘書からいきなり『3時間後に到着』と電話が入って、成田へ大急ぎで車を飛ばすこともあります」

来日の連絡があると、まずスタッフをかき集める。滞在中にお世話するメードたちや専属ドライバーの手配だ。彼らはみんな英語が堪能なことが条件。それと同時進行で、大富豪が日本に所有する邸宅や自家用車も一気に掃除する。ある大富豪は時間に厳格で、家中の時計やリモコンの内蔵時計を1秒の狂いもなく合わせることも。