人には同じ24時間しかないのに、なぜ仕事の進み具合に差が出るのだろう。成果を挙げる人たちの話を聞いてみると、業界は違っても、段取りに対する共通の意識が見えてきた。
不測の事態に備えて、情報は広く共有
国際会議ディレクター、秋山氏の仕事は多岐にわたる。会場のセッティング、警備や車両の用意、参加者対応といった準備から、当日のオペレーションまで、会議にかかわる企画・運営を統括するのが秋山氏の役目だ。
政府主催の国際会議の運営は、入札やコンペで決まる。選定は数カ月前のこともあれば、数週間前になることもある。数年前に福岡で開かれた首脳級の国際会議は、わずか1週間前の募集だった。
「募集が直前の場合、それから準備をしていては到底間に合いません。経験値からこちらで予想を立て、協力会社に声をかけて体制を整えておきます」
募集後も、すべての情報が明らかになるわけではない。
「参加者が何人で、いつ来日するのか本当に直前までわからないケースもあります。参加者が不明だと会場のレイアウトや席次が決まらないのですが、正確な情報がくるまで準備しないわけにいかない。このようなときは最大値を想定します。部屋数を追加するのは困難ですが、減らすのは容易です」
会議当日のスケジュールは、会議室や控室を誰が何時まで使うのかというレベルまで細かく決めておく。VIP級なら、空港のどこで出迎え、どこを通って車両に乗り、会場では誰が席に連れていくのかといったことも事前に計画。移動時間などを秒刻みで計画するケースもあるという。天気のように、当日にならないとわからないことはどうするか。
「たとえばフォトセッションは、晴れたら外、雨だと室内というように必要な準備が変わる場合は両方を想定して備えます」
ここまで念入りに段取りを組んでも、当日になれば不測の事態が起きるものだ。事態に対応するために、トランシーバー2台と携帯電話、さらに電波が通じない場合に備えてPHSを持ち、各班と連絡を密にする。