市場の縮小と反比例して、サントリーは過去最高シェア。他社の苦境もどこ吹く風、伸び続ける秘密に迫った!
驚異的に売れる! 金麦の秘密
「金麦」が絶好調である。14年には前年比で109%、300万ケースの販売数増という脅威の伸びを記録した。これにより、縮小する市場で、過去最高のシェアを更新した。
07年に金麦を発売後、12年に「金麦〈糖質70%オフ〉」を、14年に「金麦クリアラベル」を発売した。そのため、金麦というブランドで「機能系」「止渇系」の商品も出揃い、盤石な布陣となったのだ。
サントリービール水谷徹社長は金麦の躍進の背景には「ザ・プレミアム・モルツ」の存在があると語る。それ以前のサントリービールは、中身の調査では好評でも、パッケージに入れた状態ではガタッと評価が下がっていた。
「サントリーはウイスキーの会社、ビールは本業でないというイメージがお客様の中にあったのではないかと考えています。ザ・プレミアム・モルツの誕生と成功により、サントリーもおいしいビールを造れるメーカーだと認識されたことで、金麦を受け入れてもらえる素地が形成されたのです」
金麦はまた、家飲みにフォーカスした商品だ。経済事情を反映し、家飲みする消費者が増える中で生まれ育った商品だが、我慢して飲むというようなイメージを持ってほしくない。そのために広告も工夫している。従来のビール以上に、家庭や夫婦を取り上げ、家での食事のおともに、という訴えかけを中心に据えている。
店舗での売り場展開も、テレビCMのイメージをそのまま売り場に持っていくように「食卓提案」型だ。つまり、金麦単体ではなく、あるときはCMに登場したぶりしゃぶ、あるときは、サントリー・大手流通・食品メーカーの3者でコラボするなど、食品との組み合わせで売り場を盛り上げる。食卓提案に関する全国を対象にした大型キャンペーンを年に2、3回行うが、それだけではない。地域密着型でエリアごとに独立した企画も同程度行っている。広域営業本部の林正人部長はこう語る。
「大枠については私たち本部で決めますが、クロージングするのは地域や店舗の担当者。地元の食について一番詳しいのは、やはり地域の担当です。サントリーは全国を8エリアに分けていますが、細部を決めるのはそれぞれのエリアなので、地元を盛り上げたい、地域の支持を得たいという気持ちで各エリアが競い合っています。またエリアごとのCMも展開しています。
ファンになっていただくためには、その地域に寄り添う必要があると思います。そのため全国一律ではない、現場ごとに自分たちで考える風土をサントリーは強く持っています」