ビール系飲料市場が大きな転機を迎えている。課税済み出荷量が2014年で10年連続前年割れと市場縮小が止まらぬうえ、3ジャンル中、唯一の成長分野だった「第三のビール」の出荷量も初の前年比マイナスとなった。
それを裏付けるように、1月中旬に出そろったビール大手各社の15年事業計画は、3ジャンルのうち「ビール」の商品力強化で共通しており、“本流”回帰が鮮明だ。典型はキリンビールで、「ビール類におけるビールカテゴリーへの最注力」を打ち出した。端的にいえばビールの主力商品「一番搾り」の強化で、アサヒビール、サントリービール、サッポロビールを加えた4社共通の課題を代弁している。高付加価値のプレミアムビールやクラフトビールの強化計画は、各社共通だ。
背景には、消費者のビール離れ以上に、ビール系飲料に課せられる酒税の税率見直しにある。1月14日に閣議決定した15年度税制改正大綱は、ビール系飲料に対する酒税の具体的見直しは見送ったものの、早期に酒税改正に結論を出す方向を明示した。昨年の自民党税制調査会の論議で税率の高いビールは引き下げ、低価格が売りの第三のビールの税率を引き上げる方向が確認されていた。将来的には「発泡酒」を含む3ジャンルの税率を一本化する可能性もある。ビール系飲料の小売価格差が縮まり、各社の収益構造に大きく影響する一大事に違いなく、事業戦略の練り直しは不可避だ。
しかし酒税見直しの深刻度も含め、事情は各社で異なる。キリンの場合、ビール系飲料販売量に占める発泡酒と第三のビールの比率は65%と高く、ビールでの巻き返しが最優先の課題となる。一方、ライバルのアサヒは「スーパードライ」がビールのトップブランドとして独走を続け、発泡酒、第三のビールの比率は35%と低い。
14年のビール系飲料のメーカー別シェアは、アサヒが38.2%(前年比0.6%増)と5年連続で首位。対するキリンは33.2%(同1.6%減)とその差は開くばかり。サントリー、サッポロもシェアを伸ばし、キリンの独り負けが際立つ。同社が今年の巻き返しを図ってビールで2.5%増を目指すのもうなずける。