“秘密指定”文書類はすでに382項目

仕切り役・内閣情報調査室は警備・公安警察の“出先機関”といわれる。(時事通信フォト=写真)

昨年12月10日に特定秘密保護法が施行されて以降、霞が関周辺にはまるで幕が張られたような感触さえある。

同法による秘密指定の対象は「防衛」「外交」「スパイ防止」「テロ活動防止」の4分野。安全保障に支障をきたす恐れのある情報を「特定秘密」に指定し、秘密を洩らした公務員や業者・民間人に最長10年の懲役を科す。

この間、各省庁は膨大な量の行政情報を次々とブラックボックスへと放り込んできた。今年1月初旬に政府が公表した秘密指定の数は、昨年末に集計された文書類の一部だけで382項目。一つの「項目」に数百の文書や図表・写真類が含まれることも多く、秘密に指定された行政情報はすでに膨大な数が見込まれる。秘密指定数を増やせば、比例して逮捕の機会と理由も増える。

ところが、秘密指定の適否をチェックする国会の常設機関「情報監視審査会」はまだ設置されていない。設置は次の国会会期中の見通しだ。同審査会が政府の秘密指定を不適切と判断すれば指定解除を勧告できる。ただし、同審査会の勧告に法的拘束力はない。しかも、特定秘密の提出を要求しても政府は任意の判断で拒むことができる。つまり、同審査会が設置されても“お目付け役”には到底なりえないのだ。

師走から年初にかけて特に気になったのは、世論の反発が大きい政策課題にまつわる水面下の動きがなかなか露呈しないことだ。指定された秘密には、4分野に直接関係がなくても間接的に無関係ではないとして運用側が機密としたものも含まれるからである。

たとえば、原発再稼働に応じた自治体に電源三法交付金を優先配分しようとする政府の采配。沖縄振興予算を辺野古基地建設反対で当選した沖縄県知事に「大幅減額する」と公言した政府交渉の顛末。武器輸出を容認する防衛装備移転の新三原則を昨春決定して以降、軍事産業振興に邁進する安倍政権と軍需企業。どの案件も、先の4分野の膨大な秘密指定情報とつながる固有名詞や数字、図版、契約詳細等を、ほぼ間違いなく含む。

東京新聞が12月中旬と元旦の一面トップで「(政府が)武器購入国に資金援助」と報じたが、水面下の動きについては依然、不明のままだ。“伏魔殿”の軍事産業を政府が露骨に鼓舞すれば、開戦の危険性を孕む外交的緊張が日常的に演出される。受注した企業名や落札価格など、軍需取引関係の概要までもが秘密指定されれば、汚職が横行し、戦争ビジネスに向かう政治家や企業の実相が見えなくなってしまう。

そして、現在進行形の「TPP交渉」で潜行する日米間折衝の実像。表面化したのは「TPPで日本側が強く出た」といった真偽不明の話だけだ。

実際、関係省庁の官僚だけでなく、すでに公務を退いた官僚OBや外郭団体関係者までもが頑なに取材を拒む姿勢を崩さない。指定された秘密に抵触すると判断されれば“官僚リーク”も罰せられるが、実は現場の官僚には、自身が持つ情報のどれが秘密でどれがそうでないかがまったくわからない。従って、彼らは行政情報の開示を片っ端から自主規制し始めたかに見える。