アメリカの投資家は「黒字化」を急がない

3人の日本人が米国で設立したベンチャーが急成長している。ビッグデータの収集・保存のクラウドサービスを提供するトレジャーデータは、今年1月、ヤフー創業者のジェリー・ヤンなど著名投資家らから総額1500万ドル(約18.4億円)を集めた。顧客は博報堂や良品計画など国内の大手企業も多いが、現在も開発拠点はシリコンバレーにある。日米のビジネス環境の違いを芳川裕誠CEOに聞いた。

トレジャーデータ CEO(最高経営責任者) 芳川裕誠(よしかわ・ひろのぶ)
──シリコンバレーで起業した理由は。

企業向けソフトウェアのプロダクトカンパニー(製品志向の企業)にとって必要な環境が整っている。この分野の投資に関わっていたので土地勘もあった。また共同設立者である太田(一樹。最高技術責任者)と古橋(貞之。ソフトウェア・アーキテクト)は世界で通用するエンジニア。彼らにもシリコンバレーに来たい思いがあっただろう。

──日本では成長できないのか。

iPhoneには日本の優れた技術がたくさん入っているが、アップルが強調するのはパッケージングされたプロダクトだけだ。競争力のあるプロダクトをつくるには、技術だけでなく、マーケティング、営業、マネジメントなど幅広い分野の人材が必要になる。シリコンバレーにはそれぞれの分野のプロが揃っていて、人材の層も厚い。1億円の売り上げを10億円にする人材と、10億円を100億円にする人材では必要な能力が異なるが、シリコンバレーではどちらの能力をもつ人材も見つかる。その点を理解した投資家も多い。

日本にも優秀な人材はいるが、プロフェッショナルな人材は企業内にいて、シリコンバレーのように「流通」していない。たとえばゼロから製品化を手がけられるような人材は日本では少ない。さらに企業向けのソフトウェアでは他社との連携が重要になる。シリコンバレーには連携を持ちかける世界的なプレーヤーも集中している。