パナソニックはデジタルスチルカメラ(デジカメ)「ルミックス」により、後発ながら欧州でシェアを急拡大した。量販店との連携を強めた点が大きな成功要因とされているが、何よりも「手ぶれ補正」をはじめとする先端技術や優れたデザインが受け入れられたからだろう。パナソニックの現地法人責任者も機能的価値が受け入れられたと認識している。しかし皮肉にもこの成功を応援することになったのは、「カメラは日本製」というキヤノン、ニコン、オリンパスなどが築いた意味的価値ではないだろうか。
たしかに日本製カメラはデザインを含めた機能でドイツ製カメラを凌駕した。オートフォーカスを実現した電子化により、日本のカメラメーカーはさらに存在感を高める。その結果、デジカメという技術的パラダイムの転換に直面してさらに評判を高めていく。そういう意味では、機能的価値と意味的価値は相乗効果を生む関係にある。
パナソニックは海外市場でも機能的価値で急速に認知度を高め、意味的価値の次元でも不動の地位を確立することが望まれる。すでに“Panasonic”は、欧州でも薄型テレビやデジカメなどのAV機器で一定のブランド力を有しており、その評判を白モノでも活用できると判断した。つまり機能に対する消費者のイメージを共有しようとしているようだ。しかし、新しい画期的な技術が出現してもびくともしないスイスの時計メーカーのような消費者が認める暗黙知を創造するには長い時間がかかるだろう。
ホームアプライアンス社から同社の“Shiromono”を紹介する海外向け英文パンフレットをいただいた。和室か茶室を思わせる写真が掲載されている。ステレオタイプな日本のイメージである。パナソニックだけでなく、日本人は繊細な心を持っていて細かなところに気配りできる。そのような国民性が技術、製品にも反映されているということを強調している日本企業は多い。しかし、日本のイメージとともに歩むのがいいのか、パナソニックはパナソニックでいくのか、十分検討する必要がありそうだ。欧州で白モノの意味的価値を高める長い旅は始まったばかりだ。