2001年度に4310億円という創業以来の大赤字を計上したパナソニック。08年度はそのときに次ぐ、大幅な赤字となった。三洋電機の買収、欧州での白モノの展開、新興国市場での戦略は。経営学者とジャーナリストの2つの顔を持つ長田貴仁氏が、大坪社長に話を聞いた。
【長田】2008年度は売上高が前年度比86%の7兆7655億円。当期純利益も3790億円の赤字です。09年度も1950億円の赤字になる見通しです。それでも辛い表情をされない。むしろ以前お会いしたときより前向きな印象を受けるのですが。
【大坪】課長職に昇格のときに集合研修がありまして、質問用紙に自分の思いを書いて、性格の特徴を知るという問答がありました。そのとき、ストレス耐久性というところに一番高い点がついていました。鈍感なんですかね。
【長田】リーダーというのはそうでないといけないと思います。業績が悪化している局面で、トップが疲れた表情をしていると、従業員もどんどん落ち込んでしまいます。さて、パナソニックはいい立地でビジネスを展開していますが、それゆえに競争者も非常に多い。そこで、他の企業とは違う近未来戦略についておうかがいしたい。
【大坪】たしかにAV(映像音響機器)は次から次へと技術開発をして、先端商品を出しても競争が激しい。苦しいビジネスです。(冷蔵庫や洗濯機のような)白モノについては、国内、アジアに加えて、ヨーロッパのような新たな市場に活路を求めるということで、それなりの絵が見えてきたわけです。AVとか白モノに付随してデバイスも事業展開しています。これらの個々の商品を見ると、参入障壁が低くなってきましたが、我々は「家まるごと」「ビルまるごと」を提案していける世界でただ一つのメーカーです。パナソニックはAVや冷蔵庫や洗濯機といった白モノだけでなく、家、換気、照明などを提供でき、(家庭用燃料電池や太陽電池で)エネルギー(電気)をつくれます。ということで、低炭素でユビキタス、安心感があって、健康で生き生きと暮らせる生活の場を我々は提案できます。これを「家まるごと」と表現しています。このようなコンセプトのもとに、数年以内で商品化できるものをショールーム「エコアイデアハウス」(東京・有明)に展示しています。