【長田】今おっしゃったように、パナソニックの近未来戦略は参入障壁が高いというわけですね。

【大坪】よく事例に出されるのが、(韓国の)サムスン、LGとの競合です。個々の商品を見て競合関係を語っていますが、おっしゃったようにトータルで見るとパナソニックには優位性があると思います。

【長田】トータルソリューションということでは、三洋電機の買収はおおいに関係してくると考えられます。この点について、ご説明いただけますでしょうか。

【大坪】我々は成長の四本柱である生活快適実現、半導体・デバイス、カーエレクトロニクス、それからデジタルAVを「ABCDカルテット」と呼んでいます。これにエネルギーを加えようということで、その中核をなすのが「創エネ、蓄エネ、省エネ」。三洋電機と一緒になることで、環境という大きな柱をつくることができます。また、事業全体にエネルギーという横串を通すときも、三洋の子会社化が大きな力になりますので、数千億円のお金を出す価値は十分にあります。パナソニックの将来の成長戦略についても極めて具体的に描きやすくなります。

【長田】現在、三洋電機の買収に関する進捗状況は。

【大坪】競争法をクリアしなければならない。11カ国からいろいろ質問を受けて返答し、すでに半分ほどの国は完全にクリアしました。残る国についても引き続き、なるべく早くクリアランスがとれるよう努力をしています。

【長田】三洋電機が得意とする太陽電池や二次電池は、中国、韓国メーカーも含めて競争が激しくなってきています。

【大坪】しかし、民生用だけでなく自動車も含めて二次電池の需要が爆発的に伸びています。両社が一緒になって増産するため投資をしても、まだまだその需要は伸びることでしょう。それから、リチウムイオン二次電池になりますと安全性が非常に問われますし、リチウムはレアメタルの一種ですので、省資源タイプの商品開発をしていくということでは、三洋、パナソニックが双璧だと思います。まだまだキャッチアップを恐れるような状況ではないと。むしろ一刻も早く両社が、技術者の交流、生産の効率化、あるいはマーケットの拡大ができれば、(国内外の競合他社を)もっと引き離すことができると思いますね。

※すべて雑誌掲載当時

(奥村 森、浮田輝雄=撮影)