2001年度に4310億円という創業以来の大赤字を計上したパナソニック。08年度はそのときに次ぐ、大幅な赤字となった。三洋電機の買収、欧州での白モノの展開、新興国市場での戦略は。経営学者とジャーナリストの2つの顔を持つ長田貴仁氏が、大坪社長に話を聞いた。
【長田】中村邦夫会長が社長の頃は「高付加価値市場を狙わないと、メーカーは滅びます」と発言されていました。大坪社長は「狙うは世界のボリュームゾーン」と強調されています。これは、高付加価値市場も引き続き攻めながら、ボリュームゾーンでも拡販していこうという意味ですね。
【大坪】もちろんそうです。今回の不況が底を打って少し上向いてきたときに、豊かな消費者が出てくる国は、「ネクスト・ビリオン」といわれる新興国市場です。そこで買われる家電製品は、今の日本の中流の方が買おうとするものとは違う。ですから、高付加価値路線だけですと一部の豊かな人を対象にしたビジネスしかできない。我々は、世界の人々の、よりよい豊かな生活に貢献したいという創業者の経営理念に立ち戻って、新興国市場の中間所得層の方がどういう購買ニーズを持っておられるのかを、つぶさに知らなければならない。ハイエンドをやめるかな消費者が出てくる国は、「ネクスト・ビリオン」といわれる新興国市場です。そこで買われる家電製品は、今の日本の中流の方が買おうとするものとは違う。ですから、高付加価値路線だけですと一部の豊かな人を対象にしたビジネスしかできない。我々は、世界の人々の、よりよい豊かな生活に貢献したいという創業者の経営理念に立ち戻って、新興国市場の中間所得層の方がどういう購買ニーズを持っておられるのかを、つぶさに知らなければならない。ハイエンドをやめる庫を開けたときに照明をどう照らすことができているか、という細かい配慮をできるのが、パナソニックのすばらしさだと思っています。
【長田】今BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)に続く市場も攻めておられますが、さらに期待できる市場はどこですか。
【大坪】BRICsプラス、ベトナムの次にもちろん世界全体に攻勢をかけますが、メキシコ、インドネシア、ナイジェリア、あるいはトルコとかバルカン諸国などの市場を攻略することも考えています。
【長田】このような市場を日本人だけでやろうと思うと、到底無理ですね。
【大坪】無理です。
【長田】現地人による現地の経営を考えていかないといけない。一方で、日本人によるマネジメントの輸出も行わなくてはなりません。ところが最近の新卒者を対象にしたある調査によると「海外へ行きたくない」「海外駐在したくない」という人が増えています。
【大坪】そうですね。しかし、未知の海外市場を一から開拓するときには、そういう国に近い地域本部にも、全く恐れずに堂々と開拓したいというタフな精神を持った人がいます。そういう人に素地を築いてもらって、引き継げるような人が開拓していくということが重要です。一から現地人を探す場合もありますが、極めて挑戦心溢れる、ガッツある日本人がいれば任せます。何でも現地の人に任せようとは考えていません。
※すべて雑誌掲載当時