ホームアプライアンス社がある滋賀県草津市は、東海道と中山道が合流する東海道53次で52番目の宿場町「草津宿」して栄えた所だ。ここから「急がば回れ」という諺が生まれた。語源となったのは、室町時代の連歌師・宗長が歌った「もののふ(武士)のやばせ(矢橋)の船は速けれど急がば回れ瀬田の長橋」である。

この歌には琵琶湖を擁する草津ゆえの思いが込められている。東海道を通って都(京都)へ行く場合、草津の矢橋港からの船便を使う湖上水運と瀬田の橋を迂回する陸路が考えられた。船を使えば陸路よりも大津へ早く到着できるが、難破するリスクと背中合わせであった。特に冬は「比叡おろし」と呼ばれる比叡山から吹き下ろす強い風を受け、琵琶湖は海と同じように荒れる。命を落とした旅人は少なくなかった。遠回りにはなるが陸路を選んだほうが安全な旅を遂げることができるという教えが歌われている。

パナソニックは欧州メーカーが持っていないインバーター技術を使い、節水、省エネ、静音を実現する技術で機能を高め、使い勝手の良さも含めたデザイン(ユニバーサルデザイン=UD)で品位を向上させようとしている。4月、ドイツに欧州の消費者ニーズを調査する生活研究所も発足した。欧州の白モノ市場に遅れて来た旅人(パナソニック)よ、「急がば、回れ」。

※すべて雑誌掲載当時