人の意識は変えられない
次の世代を担う人材育成のため、セーレンでも幹部候補生を対象にしたリーダー教育に取り組んでいます。しかし、これがなかなか難しい。幹部候補社員にいくらリーダーのあるべき姿を説いても、彼らの意識が変わらない限り、リーダーとしては育ちません。過去には、社員に行動指針を示して社員の意識改革を目指したこともありましたが、具体的な成果には結びつきませんでした。つまり、人の意識を変えるのはそれほど難しいのです。
私自身は、入社早々に上層部の逆鱗に触れる発言をしたため左遷され、幹部候補からは外れた道を歩んできました。ですから、リーダー教育は一切受けていません。育てられた覚えもありません。それでも社長になり、いまこうして会長職を務めているのは、「リーダーは育てるものではなく、育つもの」であると。私自身の経験からこのように感じています。
リーダーを育てられないのなら、会社は何をすべきなのでしょうか。社員が育つ環境を整えることだと私は思います。セーレンでも、新入社員や役職者への教育や講習会の実施、あるいは人事異動によってさまざまな経験を積んでもらうことで、社員が成長できるようサポートしています。
加えて大切なことは、社員が問題意識を持って仕事に取り組むことだと思います。仕事とは、究極を言えば、問題を見つけ、それらを解決していくことに尽きます。問題を解決するために、上司や部下や同僚、ときにはお客さまも巻き込んで方策を考える。日々の仕事のなかで問題意識を持ち、問題の解決法を構築し、仕事をよりよくしていける人こそが、リーダーとして育っていける人だと思います。
上司に言われたことをただこなすだけ、つまり「作業」しているだけでは、問題意識は生まれません。「作業」ではなく「仕事」をしよう。こう言ってすぐに理解できる人もいれば、理解できない人もいます。理解できない人には、ここでもやはり、会社が与える環境の力が大きいと感じます。セーレンでは、「作業ではなく、仕事をしよう」と号令をかけるだけでなく、作業を仕事に変えるためのさまざまな仕掛けも取り入れています。