やるべきことが明確なら、行動は変わる

例えば、「現場」「現物」「現実」の三現主義に、「原理」「原則」を加えた「5ゲン主義」。これは、現場を担当する一人ひとりが付加価値を生み出す仕事をするための基本的な考え方です(第2回 http://president.jp/articles/-/14461 を参照)。また、理想の状態と現実のギャップを埋めていく「整流活動」や、現場での問題を顕在化させるための「見つけましたね運動」にも取り組んでいます(第3回 http://president.jp/articles/-/14573 を参照)。

これらの仕組みを導入することで、社員の意識を無理に変えようとしなくても、社員が組織のなかでやるべきことが明らかになり、社員の行動が自然に変わっていく。このように社員一人ひとりが働きやすく、おのずと問題解決能力を発揮できるような環境を提供することが、経営者である私の仕事だと思うのです。

ただし、このように会社が環境を整えたとしても、実際に育つかどうかは社員本人次第。与えられた環境での経験を糧にして成長する人もいれば、経験から学ぶことができずに伸び悩む人もいます。環境をうまく活用して成長できるかどうかは、その人の感性やセンスが大きくモノを言うのではないでしょうか。そういった感性やセンスがどのように養われるのかは一言では言えませんが、子どもの頃に育った環境や教育なども影響していると言えます。

私は6人兄弟の真ん中で育ちました。上から姉が2人、兄、そして私の4番目。上と下に挟まれて、兄弟間で切磋琢磨する環境でした。しかも、戦中・戦後の貧しい時代に幼少期を過ごしたため、ハングリー精神は人一倍強かったと思います。兄は私より5歳上で、私はそんな兄にくっついて遊んでいましたから、つき合うのはいつも自分より年上。子どもながらに年上の人とつき合う術を会得し、たえず年齢よりも上の目線で物事を考えていたと思います。