日本人の完璧さは変革の妨げとなる
完璧主義は日本の美徳だと思います。ビジネスから食事などの日常的なことや、物事の準備や計画までも、私の経験では日本人は細かなことに注意を払って進めます。このことは他の文化ではめったにみられません。
実際、完璧を求めることによって多くの良い効果がもたらされています。たとえば、私はインドで生まれましたが、私が最高ランクだと思うインド料理のいくつかは東京で味わえます。ビジネスの世界においては、日本の“モノづくりの文化”が世界最高水準の商品や製品を生み出してきました。野球においては、ハードヒッターの多いメジャーリーグでイチローのような日本人プレーヤーが輝かしい成績を残すのも、彼らの完成度の高い技術、完璧を求める努力の賜物と思います。さらには、当社でも見られますが、働く人の献身と勤勉さ、そして完璧を求める姿には感銘を受けます。
完璧を求めることで良い結果や利益が得られるのは明らかです。しかしながら、ビジネスの観点からしたら、コストはどうでしょうか? 完璧を求め過ぎるあまり、コストが利益を上回ってしまう場合があるのではないでしょうか? 経営者にはリスクと利益の見極めが必要ですが、同時に、ビジネスを推進するためには、もっと時間とコストの効率にも注視すべきだと思うのです。
私が日本で経営に携わってきた4年間において経験したのは、完璧主義が、時として、お客さまを中心に捉えたイノベーション(変革)などの優先すべき取組みの推進を妨げるということです。もちろん、お客さまに提供する商品やサービスの質に妥協があってはなりませんが、急速に移り変わるマーケットでは、完璧を求めるあまりに過剰な市場調査がおこなわれ現実を見る感覚が鈍ったり、優柔不断に陥り新たなお客さまのニーズを見失うリスクがあるのです。