日本経済は消費税増税の逆風を乗り切り、株価は再び上昇局面に入ったようだ。2020年の東京オリンピックを控え、各社、攻めの経営が目立つ。少子高齢社会のなかで、企業はどこへ向かうのか。新たに経営トップの座についた人物を解剖し、未来への展望を開く。
始末書と減給の数なら誰にも負けない
27期連続の増収増益を果たし、快進撃をつづけるニトリ。創業者の似鳥昭雄現会長からバトンを受けた白井俊之社長は、大卒入社から35年の叩き上げ。創業家以外でニトリHDとニトリの代表権を持つのは白井社長が初となり、似鳥会長からの厚い信頼がうかがえる。
――似鳥会長から怒られた回数は社内で一番だとか。
【白井】自慢にならないが、始末書や減給の数はおそらく社内で一番。売り場にいた頃から失敗は多かった。数十万円のオーダーカーテンが寸法間違いで使えなくなり、あとで数百円のクッションカバーになったこともある(笑)。そうやって上司から叱られながらも、一つひとつ仕事を覚えてきたのが自分の強みだと思う。
30代後半で店舗全体のマネジャーを務めていた頃、自分から減給を申し出たこともある。いくつかの店舗で「残業が多い」という理由で辞める人が出て、一部にサービス残業があることもわかった。薄々感じていたけれど黙認していたことを、責任者として罰せられるべきだと思った。ケジメをつけてから、改革は進めようと思った。その後は退職者が目に見えて減り、今では流通業でもかなり低い退職率を誇っている。
――会長からも、「リスクを取って改善する」と評価が高い。
【白井】反省すべき点は反省し、さらに上を目指す。改革なき拡大はただの膨張。改革を重ねつつ会社が大きくなるのが本物の成長だと考えている。