日本経済は消費税増税の逆風を乗り切り、株価は再び上昇局面に入ったようだ。2020年の東京オリンピックを控え、各社、攻めの経営が目立つ。少子高齢社会のなかで、企業はどこへ向かうのか。新たに経営トップの座についた人物を解剖し、未来への展望を開く。
欧米と新興国、9カ国でマネジメント
製薬国内首位企業の社長兼COO(最高執行責任者)にフランス人のクリストフ・ウェバー氏が着任。1年後にはCEO(最高経営責任者)に就任予定だ。40代でイギリスのグラクソ・スミスクライン(GSK)のワクチン社社長など、多くの経営に携わった手腕に注目が集まる。
――社長就任を受諾した経緯はどのようなものだったのか。
【ウェバー】武田がグローバル市場で戦うためには、海外、特に成長する新興国市場で存在感を高めていく必要がある。そこで、欧米と新興国、双方の事業に精通した人材を求めていた。その条件に私が合致したのだろう。武田が注力するバイオ医薬品分野の経験も積んでいた。
私自身、昨年、長谷川閑史社長(現会長)から次期社長就任要請の電話をもらったときは、とてもうれしかった。世界的に有名で潜在能力も高く、将来が期待される武田をグローバルリーダー企業へと飛躍させる。その挑戦的な目標に興奮した。
外国人が社長になると、伝統が軽視されるとの危惧があるが、それは逆だ。医薬の世界で武田ほど歴史があり、「誠実」を核にした価値観が明確な製薬会社は多くない。これは信頼を得る強いアドバンテージだ。社長就任を決意したのも、挑戦的な目標と価値観への共感からだった。
――ウェバー氏がどのような経営を行うか、関心の的だ。
【ウェバー】私がGSKのいくつかの会社でマネジメントを行ううえで大切にしたのは従業員のエンゲージメント、つまり、組織の目標達成に向け、誰もが熱意を持って力を発揮していくような会社との強いつながりだ。
リーダーシップの本質は、部下を納得させ、「この仕事をぜひやりたい」と動機づけることにあると思う。そのため、私は意識してよきリスナーとなり、チームの話に耳を傾ける協調的なスタイルを第一に考える。十分にディスカッションし、連携を取ったうえで、意思決定は遅れを許さず、的確に行うやり方だ。
日本の場合、会議などで発言や質問が控えめな傾向があるが、それは文化の違いだ。違いを認め合い、私のほうから近づき、みんなが理解できる目標設定をしていこうと思っている。