日本経済は消費税増税の逆風を乗り切り、株価は再び上昇局面に入ったようだ。2020年の東京オリンピックを控え、各社、攻めの経営が目立つ。少子高齢社会のなかで、企業はどこへ向かうのか。新たに経営トップの座についた人物を解剖し、未来への展望を開く。

総合職2期生、銀行初の女性トップ

初の女性の銀行トップ就任は注目を集めた。しかし、野村グループには男女にこだわらない風土があり、本人も会社も「特段大した話ではない」と思っていたという。しかし、女性総合職2期生として入社後、トレーダーとしてスタートを切り、エクイティ部門、投資部門と多様な部署でのキャリアは、「野村の中でも珍しい」とされる。

野村信託銀行執行役社長
眞保智絵氏
――突然の社長人事でしたが。

【眞保】入社時には、長く仕事を続けたいとは考えていましたが、まさか社長になるなんて、思いもしませんでした。

――ご主人の反応は?

【眞保】家で仕事の話はしないので、特段何もありませんでした。でも、就任後しばらくして、夫が急にサポートしてくれるようになったんです。夫もハードワーカーなのに、「妻の仕事に理解があって協力的!」などと、周囲の女性に褒められて人気が上がったようです(笑)。

――多くの部署の経験があるが。

【眞保】異動のたびに、常に「プロフェッショナルでありたい」と意識してきました。その過程で、野村でできることは非常に幅広いと気づき、転職するよりもここでさまざまな経験を積みたいと考え始めました。また、いろんな部署を経験し、社内外の人脈も増えました。

――過去に辛かったことは?

【眞保】初めてマネジャーとしてチームを率いたとき、部下が外資系企業に転職しました。「より面白い機会がありそう」という理由でしたが、野村の中にもいろんなチャンスがあることを伝えきれなかったこと、自分が彼らのことをどう思い、何を期待しているかを言えなかったこと、そして彼らから相談がなかったことに無力感を覚えました。それからは、意識的にコミュニケーションを取ることを大切にしてきました。