武部新農水大臣への期待と懸念

新しく農水大臣になる武部氏は、減反を廃止して米価を下げ、主業農家に直接支払いをすることで、農地の集積・農業の規模拡大を図るべきだという私の主張を知っている。しかし、すでに農水省の幹部は武部氏に次のようなご注進をしているはずである。

「日本のようなジャポニカ米の市場は小さいので、減反を廃止して輸出するなんて無理です」。しかし、中国の1億6000万トンの市場の4割がジャポニカ米に置き換わっていることやカリフォルニアのコメ農業が持続可能でないかもしれないことを、彼らは知らないか農林族議員にレクしようとはしない。

武部氏の父親の勤氏は、BSE問題で農政が混乱していた時の農水大臣だった。この時、勤氏は、これからは消費者に軸足を置いた農政を展開するのだと主張した。また、武部新氏の選挙区は、酪農や畑作が中心で米作はほとんどない。コメについて思い切ったことをやってくれるという期待もある。

山下一仁『コメ高騰の深層』(宝島社新書)
山下一仁『コメ高騰の深層』(宝島社新書)

しかし、武部氏も、国会の委員会で答弁するなど大臣としての業務を果たしていくためには、農水省事務局のサポートがなければならない。たとえ間違っていると思ったとしても、農水省の主張を聞き入れるしかない。また、私のような主張をすれば、農業保護が何よりも優先すると考える農林水産委員会の全党的な反発を受けることになる。

高い価格で農業を保護するのが、農政トライアングルの基本である。これは農業を保護しているようで、農地を減らし、最終的には生産者の首も絞めていることは、これまで本連載で何度も述べてきたことだ。だが、農林族議員全員の意向を無視できないだろうし、農政トライアングルの利益に奉仕するだけの農政は変わらないだろう。

すでに「需要に応じたコメ生産が必要だ」と述べている。減反を維持するということである。残念ながら、いつまでたっても、国民全体に奉仕する農政は実現されない。

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