近年、「農林族議員」の大臣が続くワケ
ところが、年々農業政策が複雑になっていった。
さまざまな要望や農業事情の多様化などに対応していくうちに、農業政策が簡単には理解できないものとなっていった。農林水産省には100くらいの課がある。それぞれの課にいくつかの政策がある。これをすべて理解しようとすることは極めて困難である。さらに、政治主導の名のもとに、国会の委員会では、役人ではなく極力大臣や副大臣が答弁するよう求められている。そうなると、さまざまな政策の細かいところまで精通した族議員でなければ、大臣は務まらなくなってしまう。
農水省の局長・部長・課長などは、彼らにとって重要な政策を導入したり変更しようとしたりするときは、与党・自民党の主だった議員に説明・根回しを行う。その際、農水省の職員は、彼らに都合の良い情報を伝えることを忘れない。2年前にコメがスーパーの店頭から消えたときも、「コメは不足していない。新米が供給されると米価は下がる」という農水省のウソの情報を、国会議員は信じてしまう。まさか農水省がウソをつくとは思わないからだ。こうして農水省と農林関係議員は政策情報を共有する。こうして農林族議員は誕生する。
農政改革は全党一致で反対
その政策は国民・消費者の利益になるものではない。農水省・JA農協・農林族議員といういわゆる農政トライアングルの利益にかなうものである。規模の大きな農家に農地を集積して農業の効率化を図り、農産物価格を下げて「食費が高い」と生活に困る国民を救済しようなどという政策は採用されない。コストの高い零細な兼業農家が農業から退出すると、兼業収入を利用したJAバンクの預金量が減少するし、農家戸数が減少すれば農業の政治力が低下してしまうからだ。
これは自民党農林族議員だけではない。衆参の農林水産委員会のメンバーは自民党から共産党まですべて同じく農業の構造改革や効率化に反対する人たちなのだ。農産物の関税が引き下げられると消費者は利益を受ける。しかし、農産物関税引き下げ反対の決議案には全党が一致して賛成する。

