既存事業を改善するだけでは不十分

売上が100億円ある事業が、実は数倍まで伸びる可能性を持っているかもしれない。

高いシェアを持つ商品が、顧客の不便を解消すれば、さらに大きな市場をつくれるかもしれない。

既存顧客の数字だけを見ているために、その商品を「買いたかったのに買わなかった人」を見落としているかもしれない。

日商60万円だった店で私が見つけたのも、まさに「買ってくれたお客様」ではなく、「買えなかったお客様」でした。好調な数字は安心材料になります。しかし同時に、本来なら見つけられたはずの課題を覆い隠してしまうこともあります。

そして今の時代は、既存のものを改善するだけでは十分ではないとも感じています。今ある店をもっと良くする。

今ある商品をもっと売れるようにする。

今ある事業の利益率を高める。

こうした「磨く力」は、もちろん重要です。

しかし、市場そのものが縮小したり、消費者の行動が大きく変わったりする時代には、「良くする対象」自体が先細っていくことがあります。

だから必要になるのが、まだ存在しない商売を「生み出す力」です。

既存事業を改善する力と、新しい事業を生み出す力は、似ているようで、実は別の筋肉だと私は考えています。

これからの経営に必要な2つの力

ローソンには、現場が自らチャレンジすることを歓迎する風土がありました。

「こんなことをやってみたい」という提案に対して、最初から否定するのではなく、まず考えてみる。

そうした環境が、「生み出す力」を支えていたのだと思います。

稼いでいるものを疑い、さらに磨き切る力。そして、今はまだ存在しない商売を思いつき、形にしていく力。

これからの経営者やビジネスパーソンには、この両方が必要になるのではないでしょうか。

石井昭人『2000店舗を成功に導いたプロのメソッド 出店戦略の最強技法』(日本能率協会マネジメントセンター)
石井昭人『2000店舗を成功に導いたプロのメソッド 出店戦略の最強技法』(日本能率協会マネジメントセンター)

儲かっているものに手を付けるのは怖いものです。

「失敗したらどうするのか」と考えるのは当然です。

しかし、「儲かっているから」という理由だけで現状維持を選べば、その事業が本当はどこまで伸びたのかを知ることはできません。

まず、目の前の成功を疑ってみる。

そして現場を見て、仮説を立て、「景色」を「数字という証拠」に変えていく。

その先に、既存事業のさらなる成長だけでなく、これまで存在しなかった新しい商売の種が見えてくることもあるのです。

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