年商2.2億円→6.2億円に化けた

結果はどうなったか。移転した店舗の1日の売上は、約60万円から約90万円へ伸びました。

年間にすると約3億円を超える売上です。

これだけでも大きな成果ですが、私は「このマーケットには、まだ需要がある」と考えました。

そこで、さらにもう1店舗を新設しました。

こちらも1日の売上が約80万円、年間では約3億円に近い売上になりました。

つまり、もともとは1店舗で日商約60万円、年間約2.2億円だったマーケットが、移転と新規出店によって、2店舗合計で日商約170万円、年間約6.2億円の売上に伸びたのです。

もちろん、これは結果論でもあります。

もし移転後の売上が伸びなければ、「好調店をわざわざ動かして失敗した」と言われたでしょう。

だからこそ重要なのは、単なる勘や勢いで勝負するのではなく、仮説を立て、その根拠となる「証拠」を集めることです。

「うまくいっている」が思考を止める

この経験以降、私は、1店舗の数字だけを見るのではなく、「エリア全体でどこまで伸ばせるか」を考えることを、より強く意識するようになりました。

住宅街の空撮
写真=iStock.com/Sean Pavone
※写真はイメージです

その後、ローソンで出店に関わるようになったときにも、この考え方は生きました。

「新しい店を出すこと」と「そのエリアにある既存店を良くすること」を、切り離さずに考えるのです。

新規出店だけを考えてしまうと、既存店が本来持っている伸びしろを見過ごしたまま、新しい店をつくることになりかねません。

逆に、既存店の改善だけを続けていては、そのエリアに存在する新しい需要を取りこぼしてしまう可能性があります。

今ある店を、どこまで伸ばせるのか。同時に、新しい店をどこに出せば、エリア全体の売上を最大化できるのか。この二つを同時に考えることは、あの日商60万円の店での経験から生まれた、私の出店の基本の考え方です。

これは、店舗ビジネスだけに限った話ではないと思います。

企業では、業績の悪い事業には多くの人が問題意識を持ちます。

「どうすれば改善できるか」
「何を変えればいいのか」

と議論します。

ところが、業績のいい事業については、途端に議論が少なくなります。

「うまくいっているのだから、このままでいい」そう考えてしまうからです。

しかし、本当にそうでしょうか。