あまりの美しさに“三度見”された伝説の女優
現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説『ブラッサム』(NHK)。初回冒頭、ヒロインの若き日を演じる石橋静河よりも先に、その後のヒロインを演じる加賀まりこがいきなり登場して話題を呼んだ。ヒロインのモデルとなった作家・宇野千代は「恋多き女」として有名だが、加賀まりこも負けてはいない。自分に正直すぎるがゆえの波乱万丈な半生を振り返ってみたい。
加賀まりこは1943年生まれ。東京・神田生まれで神楽坂育ち。生まれたのは、病院の防空壕の中だったという。父の加賀四郎は大映の映画プロデューサー。家には大勢の監督や俳優が出入りしていた。そうした環境もあり、子ども本人の意思に任せ、自主独立の精神を養うのが親の教育方針だったようだ。
実際、加賀まりこは精神的に早熟だった。本好きで小学生時代から神保町に通っていたが、初めて自分でお金を出して買ったのが澁澤龍彦訳『マルキ・ド・サド選集』だったというから驚く(加賀まりこ『純情ババァになりました』。以下のエピソード、発言も基本的に本書にもとづく)。
少女時代から、日本人離れした美貌は際立っていた。まだ知り合う前の歌手で俳優の井上順が、六本木の路上ですれ違った加賀のあまりの美しさに三度見したという逸話も残っている。
20歳で単身パリに失踪
高校生になると、加賀は有名人のサロンとして知られていた東京・飯倉片町のイタリアンレストラン「キャンティ」に入り浸り、建築家の丹下健三や作家の三島由紀夫ら多くの大物文化人と顔見知りになった。
そんなある日、加賀をたまたま見かけた劇作家の寺山修司と映画監督の篠田正浩から通学途中のところをスカウトされ、17歳で芸能界入りする。
代表作のひとつになったのが、主演映画『月曜日のユカ』(1964年公開)である。
加賀が演じたのは、奔放だが憎めないキャバレーのホステス。可愛らしさとクールな色気が同居する鮮烈な魅力で一躍注目され、人気女優になった。
ストレートに言いたいことを言う加賀をマスコミも放ってはおかなかった。当時人気だったフランスの官能派女優になぞらえて「和製ブリジット・バルドー」と喧伝し、「小悪魔」の代名詞的存在として格好のネタにした。
しかし20歳のとき、忙しくなりすぎた仕事や嘘だらけのゴシップ記事に嫌気がさした加賀は日本を飛び出し、パリで1人暮らしを始める。もうお金はたくさん稼いだので、女優も辞めるつもりだった。だがここでもマスコミは、人気若手女優の突然の“失踪”に飛びつき、センセーショナルに取り上げた。

