取りこぼした客は何人なのか、データ化

そこで、車の台数やレジ待ちの状況、来店を諦めているお客様などを実際に調べ、記録しました。

私はこの作業を、単なる「景色」を「数字という証拠」に変えることだと考えています。

現場では、「なんとなく混んでいる」「お客様を逃している気がする」と感じることがあります。しかし、それだけでは会社を動かすことはできません。

特に、すでに十分な売上を上げている店舗に追加投資をするとなれば、「なぜ、そんなことをする必要があるのか」という説明が必要になります。だからこそ、現場で感じた違和感を観察し、測り、数字にする。

そうすることで初めて、「この店は好調なのではなく、本来取れる需要を取りこぼしているのではないか」という仮説を検証できるようになります。

資料を確認する人
写真=iStock.com/chachamal
※写真はイメージです

社内が反対する中、繁盛店を閉めると…

もう一つ、私が見ていたのは、その1店舗だけではありませんでした。街全体です。

この街にはどれくらいのお客様がいるのか。

人はどのように動いているのか。

どこで買い物をしているのか。

競合店はどこにあり、まだ満たされていない需要はどこにあるのか。

そうやって街を俯瞰してみると、「この街のお客様は、もっとセブン‐イレブンを必要としているのではないか」という仮説が浮かび上がりました。

1店舗だけを見れば、「日商60万円の成功店」です。

しかし、街全体を一つのマーケットとして見れば、「まだ取れていない需要がある」と捉えることができます。

そこで私は、この店の売上が60万円で止まっているのは需要がないからではなく、店舗の大きさや駐車場などの物理的な制約によって、本来取れるはずの需要を取りこぼしているからだと判断しました。

そして、好調だった店をあえて閉め、すぐ近くの、より大きな駐車場などを確保できる場所へ移転することにしました。

当然、社内では反発がありました。

「なぜ、こんなに稼いでいる店を潰すのか」
「なぜ、わざわざ余計なお金を使うのか」

もっともな意見です。

移転には当然、投資が必要です。今まで60万円売れていた店が、移転後も同じように売れる保証もありません。

それでも決断したのは、目の前の「60万円」という数字ではなく、その背後にある需要を見ていたからです。