意中の女性へプロポーズしたら、彼女の黒目が右へ動いた。さて、彼女の本心は? 表情、しぐさは雄弁だ。その意味をマスターすれば、相手の深層心理が手に取るようにわかるのだ。

脳内が矛盾する命令に葛藤している表れ

腕組みは「拒否・拒絶」のしぐさであると同時に、「自己防衛」のしぐさでもあった。では人は通常、何を守ろうとするだろうか。まずは、体だろう。体の前で腕を組むしぐさは、相手の物理的な攻撃から端的に体を守る効果がある。もうひとつは、心だろう。相手の攻撃によって精神的な打撃を受けるのを防ぎたいときに、人は腕を組む。

では、商談の場面で腕組みをしているセールスマンは、相手にどんな印象を与えるだろうか。おそらく、胡散臭さだろう。商談の相手が目の前で腕を組んだら、「こいつは何かを隠している。本音を言っていないな」という印象をあなたは受け取るはずだ。つまり、腕組みに象徴されるクローズ・ポスチャーは、「隠蔽」のサインでもあるのだ。相手に正直に言えないことがあり、それを相手に悟られると困るから、腕を組んで相手からの“突っ込み”を防御するのである。

反対に、何も隠すことがなく、しかも自社の商品に惚れ込んでいるようなセールスマンは、イラストレーター(例示動作)をするのが普通だ。商品の素晴らしさを力説しながら、それに合わせて無意識に手や腕を動かしてしまう。

つまり、商品の良しあしを見極めるには、商品を吟味する前に、それを売りにきたセールスマンのしぐさを吟味すればいいのである。当のセールスマンが心からいい商品で価格も妥当だと思っていれば、彼は例示動作をするだろう。反対に、本当は欠陥商品であったり不当に高い値段をつけていたりする場合、彼は自己防衛のしぐさをするだろう。つまり、セールスマンが目の前で腕組みをしたら、その商品は買わないのが正解なのだ。

どんな天才詐欺師でも、たとえ言葉のうえでは嘘をつき通せても、無意識のしぐさまでコントロールするのは不可能である。そして、嘘をつき通す意志がほころび始めていることを象徴するしぐさが、手で口を半分被ったり、眉間に手をやったり、上唇に手をやるといった、「身づくろい」のしぐさなのである。