意中の女性へプロポーズしたら、彼女の黒目が右へ動いた。さて、彼女の本心は? 表情、しぐさは雄弁だ。その意味をマスターすれば、相手の深層心理が手に取るようにわかるのだ。

「足の向き」との不一致は、興味なしのサイン

入国管理局の特別審理官が要注意人物としてマークするのは、必ずしも風体の怪しい人間ばかりではない。「体の向き」が不自然な人物を注視するのは、入国審査のイロハである。

ご承知のように、入国カウンターではパスポートを確認され入国の目的などを尋ねられるが、普通の人は、順番待ちの列からカウンターの前にやってくると、カウンターに体の正面を向ける。ところが何か疚やましいところのある人物は、顔と上体だけをカウンターに向け、下半身は出口のほうを向けている場合が多いのである。

これは、「一刻も早くこの場を立ち去りたい」という心理の表れであり、こうした不自然な体の向きを取る人物は、たちまち空港内を巡回警備している特別警備官に取り囲まれることになる。

体の向きに敏感なのは、特別入国審理官ばかりではない。いわゆる“テキ屋”と呼ばれる人々も、常に客の体の向きを注視している。

なぜなら、露天で商売をしていると冷やかし客が多いからだ。冷やかし客にいちいち営業トークをしかけていては、商売あがったり。テキ屋が相手にするのは、体の向きと足の向きが一致している客だけなのである。

体の向きと足の向きが一致している客は、買い気の客。一方、顔と上体は店のほうを向いていても、足が進行方向を向いたままの客は冷やかし客であることを彼らは経験的に知っている。この手の客は、「このショルダーバッグいいわねぇ」などと口では言っても、まず購入にいたることはないから、テキ屋は相手にしないのである。

この事情は、ビジネスの商談の場面でもまったく同じである。たとえ相手の上体がこちらを向いていても、足が部屋の出口のほうを向いているような場合は、乗り気でないと判断してまず間違いない。同様に、上体が前傾しているか後傾しているかも、ビジネス上の重要なメッセージを含んでいる。