意中の女性へプロポーズしたら、彼女の黒目が右へ動いた。さて、彼女の本心は? 表情、しぐさは雄弁だ。その意味をマスターすれば、相手の深層心理が手に取るようにわかるのだ。
「腕の位置」と「足の組み方」を見よ
私は人間観察の訓練のために、電車の中で向かい側の席に座っている人たちがいったいどの駅で降りるかを予測するゲームをやることがある。
携帯電話を畳んだり、読んでいた文庫本をそそくさと鞄の中にしまったりすれば、通常それは「もうすぐ降りる」サインだ。ところが、こうしたしぐさの直後に腕組みをされた途端、このゲームの難易度は急にアップしてしまう。
腕組みは人間のさまざまなしぐさの中でも重要なもののひとつであり、3つのタイプがある。
第1は、「拒否・拒絶」もしくは「自己防衛」の腕組みである。これは腕組みの中でも「弱い腕組み」であり、ポケットに両手を突っ込むしぐさや、体の前面でハンドバッグを両手で持つしぐさもこの弱い腕組みの仲間である。よく、商談のテーブルの上で両手の指先を組み合わせて、親指をくるくる回すしぐさをする人がいるが、これも弱い腕組みの一種。当人は無意識でも、相手は拒否されているという印象を強く受けてしまう。買う側ならばともかく、売る側は絶対にやってはいけないしぐさだ。
第2は、「集中」である。体を開く姿勢をオープン・ポスチャー、体を閉じる姿勢をクローズ・ポスチャーというが、腕組みはクローズ・ポスチャーの典型。基本的には自分の縄張りを主張するしぐさだが、意識を自分の内側に集中させているときにも表れる場合があるのだ。
つまり、電車の中で携帯を畳んだり文庫本を鞄にしまったりした直後に腕組みをする人は、ひと通りの片づけを終えて、自分の内側に閉じこもって眠ろうとしている可能性があるわけだ。座った姿勢で睡眠に入る場合は腕組みと同時に足も組まれることが多く、つまり腕も足も組んだ人は、次の駅で降りるどころかたいていの場合は眠り込んでしまうのである。
ちなみに、「自己防衛」の腕組みの場合は、同時に足が組まれることはない。攻撃から身を守るには、常に走って逃げられる体勢を取っておく必要があるからだ。