東日本大震災以降、自然災害のリスクを考慮した資産管理を意識するようになった人も多いのではないだろうか。非常用袋の中身から被災後の各種手続きのコツまで「有事のお金の守り方」を伝授する。

災害に直面したら、まず自分の身の安全を確保することを最優先に考えたい。通帳と印鑑をなくしても預金を失うわけではない。各種手続きは避難生活が落ち着いてからでも十分だ。

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被災後は、この優先順位で手続きを!

ただし手続きの進め方には優先順位がある(図参照)。最初にするべきことは、どの程度の被害に遭ったのかを証明するための「罹災(りさい)証明書」を各地方自治体から発行してもらうことだ。これを提示することによって、公的支援制度、義援金の配分、保険請求や住宅ローンの延滞取り消しなど、さまざまな手続きがスムーズに行える。

申請の流れとしては、まず市区町村の窓口に、被害状況がわかる証拠写真を添えて、全壊、大規模半壊、半壊、一部損壊など罹災状況を記入した申請書を提出する。後日、自治体の職員が現場を確認し、罹災が認められたら罹災証明書が発行される。

「生活設計塾クルー」ファイナンシャルプランナーの深田晶恵氏は、罹災証明書の申請にはいくつかポイントがあるという。

「被害状況の証拠写真を撮るのは、家の中を片付けたり修理したりする前にしてください。被害の痕跡がわからなくなると、大規模半壊だったのに半壊の認定しか受けられなくなる恐れもあります」

罹災証明書で、どのランクの罹災レベルに認定されるかは非常に重要だ。それにより、保険金額や義援金の内容なども変わってくるからだ。そのため、自分で適当に罹災状況を判断せず、認定基準をきちんと確認してから申請するべきだ。判定基準を記載した資料は内閣府のホームページから誰でも見ることができる。

注意したいのは、被災状況を確認しに来る自治体の職員もその道の専門家ではないという点だ。彼らの判断を鵜呑みにせず、疑問点があればその場で積極的に確認したほうがいい。