逆境を前向きにする青学・原晋監督の言葉

言葉選びの観点で参考になるのが、青山学院大学陸上競技部の原晋監督です。

たとえば、2024年、第100回箱根駅伝の直前で、チーム内でインフルエンザが広がり、主力選手が相次いで体調を崩すというアクシデントがありました。原監督自身、「もうシードを取れるかどうかというレベルだった」と振り返っています。

しかし、監督は、そこで悲観的な言葉を口にするのではなく、

「早めに疲れが取れてよかったね」

と、前向きな言葉を選び、チームに声かけをしました。本来であれば、不安を口にしてもおかしくない場面でしたが、原監督は逆境を前向きな言葉へと変換したのです。

原監督率いる、青山学院大学陸上競技部
原監督率いる、青山学院大学陸上競技部(平成28年2月、総理大臣官邸にて)(画像=内閣官房内閣広報室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

これなどは、ポイント①、相手(学生)がどう感じるかを意識した言葉選びといえるでしょう。ネガティブな状況をそのまま伝えるのではなく、次につながる前向きな言葉に変える。こうした言葉選びは、組織を率いるリーダーにとって重要な技術です。

菊池風磨が発した、言葉のリスク管理の本質

もうひとつ、言葉の受け取られ方を考える上で、印象的な発言があります。

男性アイドルグループtimeleszタイムレスの追加メンバーを決定するオーディション番組「timelesz project-AUDITION-」で、メンバーの菊池風磨氏が発したコメントです。

番組の中で、応募理由を聞かれたオーディション参加者の一人が、

「僕とtimeleszの皆さん、そしてsecondzセカンズ(timeleszのファンの名称)の皆さん、全員がまだつかめていない、“本物の景色”をつかみに来ました」と語りました。

この発言を聞いた菊池氏は、それは自分たちのそれまでの歩みが、本物じゃなかったということか? と確認した上で、彼にこう言ったのです。

「ひとつの言葉が、受け取り手によって、悲しくも聞こえるし、プラスにも聞こえる。いろいろな側面から言葉を考えてほしい」と。

このシーンを観たとき、私はハッとしました。

たしかに、この番組を観た人がtimeleszの前身であるSexy Zone時代からのファンだったら、自分たちが応援してきたグループを侮辱されたと受け取るかもしれません。あるいは、高圧的に受け取られて反感を買う可能性もあるわけです。

菊池氏は、芸能界を志す者の「言葉選び」の大切さを説いたのですね。

まさに、言葉のリスク管理の本質をついた指摘ではないでしょうか。

発言する側がどんな意図を持っていても、受け取る側の立場によって意味は変わる。だからこそ、言葉は多くの視点から考える必要があるのです。