AIの登場によって仕事はどう変わるのか。ジャーナリストの池上彰さんは「かつて最も『頭を使う』と思われていた仕事が、真っ先にAIに侵食されるという皮肉な現象が起きつつある」という――。

※本稿は、池上彰『AI時代に自分の頭でどう考える? 奪われるのは仕事か、思考か』(Gakken)の一部を再編集したものです。

東京大学安田講堂
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AIに仕事を奪われにくいブルーカラー

最近アメリカでよく使われるようになってきた表現があります。「ブルーカラービリオネア(ブルーカラーの億万長者)」です。

この言葉は、配管工や電気工事士、建設作業員、自動車修理工といったブルーカラー職の中から、従来のイメージを超える高収入層が生まれている状況を、やや誇張気味に言い表したものです。その背景には、これらの仕事がAIやロボットでは代替しにくいことに加え、慢性的な人手不足が重なって賃金が押し上げられていることがあります。

日本でも似た現象が起きています。タクシー業界を見てみましょう。

かつてタクシーの運転手は、空車のまま街を流して客を探すという非効率な仕事の仕方を強いられていました。しかしGOやS・RIDEのような配車アプリが普及してからは、スマートフォンで呼ばれた客のところに直接向かえるようになり、無駄な時間が激減しました。その結果、月収100万円を超えるタクシー運転手まで登場しているといいます。

事務職や管理職より職人が稼ぐ時代に

以前なら「タクシー運転手の仕事はAIに奪われる」と言われていたのに、逆にAIのツールを活用することで収入が大幅に上がったのです。皮肉と言えば皮肉ですが、これはAIとの「うまい付き合い方」の一つの実例でもあります。

話を戻しましょう。ブルーカラービリオネアという言葉が象徴しているのは、職業の価値観の大転換です。

かつて日本でも、子どもが「大工になりたい」「配管工になりたい」と言うと、親は反対しがちでした。しかしいまや、事務職や管理職こそがAIに代替されやすく、職人仕事こそが安定しているという時代が来つつあるのです。