「頭を使う仕事」が真っ先に侵食される
その結果、コンサルタント業界では「人間にしかできない価値とは何か」が厳しく問われるようになっています。
たとえば、経営者の本音を引き出し、社内の複雑な人間関係を調整しながら改革を進めること。あるいは、企業の文化や歴史、現場の空気感まで踏まえた上で、「この会社に本当に必要な変化は何か」を見極めること。こうした仕事は、単なるデータ分析だけでは成り立ちません。
しかし、こうした仕事以外では、AIとの差別化は難しくなっています。
かつて最も「頭を使う」と思われていた仕事が、最も素早くAIに侵食される。非常に皮肉な現象がいま起きつつあるのです。
「就活生の親」に向けた企業CM
仕事の変化は、就職活動の風景も変えています。
最近、テレビコマーシャルを見ていて気づいたことがあります。伊藤忠商事、三菱地所、日本郵船、日本製鉄――こうした企業の広告が増えているではありませんか。
不思議なのは、これらの広告の内容が「商品のPR」ではなく、「うちの会社はこんな大切な仕事をしています」という企業活動の説明になっていることです。
これはどういう意図があるのか。就職活動を経験した世代の人に聞いてみると、納得のいく答えが返ってきました。いまの大学生は内定を得ると、親に「ここに就職することにしたんだけど」と相談・報告するのだそうです。その親世代が企業名を聞いて「えっ、聞いたことのない会社!」と難色を示さないように、親に向けてPRしているというわけです。
日本郵船は私の世代には超一流企業として有名ですが、いまの若者にはなじみが薄い。佐川急便は知っていても日本郵船は知らない。だから「日本郵船は世界の物資流通を支えています」というCMで、親世代に存在感を示す必要がある、ということです。
これは面白い現象です。AIの普及とは直接関係ないように見えますが、根っこではつながっています。AIで多くの業務が変わりつつある中で、「この会社に就職して将来は安泰か」という不安が高まっている。だからこそ子どもも親も、就職先の選択に慎重になる。その不安に寄り添う形で、企業側も「うちは安定して社会に必要な仕事をしています」とアピールせざるを得なくなっているのでしょう。

