何かと反発してくる部下をどう指導したらいいのか。行動経済学に詳しい橋本之克氏は「反発心の強い部下は、指導内容そのものに反発しているわけではない。この一言を伝えるだけで、瞬く間におとなしくなる」という――。

※本稿は、橋本之克『チームは「仕組み化」でうまくいく 組織力を高める行動心理学』(祥伝社)の一部を再編集したものです。

ラップトップで会議を開く3人の男性と女性のビジネスマン
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なぜ人は相手の言葉に反発するのか

事例:何を言っても反発してくる部下。上司としてどう指導すればいい?

制作部のマネージャー・花田さんは、部下のデザイナーである笹川さんへの対応に悩んでいる。笹川さんはセンスもよく成果も出しているが、花田さんが出す修正指示や提案に対しては必ず反発してくるからだ。

「こうすれば?」とアドバイスすれば、「でも私はこう思います」「このやり方で過去に結果を出してるんで」と何かしら一言返ってくる。

いずれも一理あるため、花田さんとしては強く否定しづらく、いちいち議論が長引くためストレスもたまる……。

上司が指導のつもりで伝えるアドバイスに、ことごとく反発の態度を見せてくる。この現象は、「心理的リアクタンス」という概念で説明できます。

リアクタンスとは、交流回路における電流を妨げる電気抵抗のこと。心理的リアクタンスとは、自分の選択の自由を脅おびやかされたと感じた人が、その自由を取り戻そうとする反射的な抵抗を意味します。

心理的リアクタンスを伝える上で一番わかりやすいのは、イソップ寓話ぐうわの「北風と太陽」でしょう。旅人の上着を脱がせようと、北風が強く吹けば吹くほど、旅人は必死に上着を押さえます。ところが、太陽が温かく照らすと、旅人は自ら上着を脱ぎ始める。

外から力を加えるほど抵抗は強まるが、自ら動きたくなる環境を整えると自発的な行動が生まれる――。この構図は職場の人間関係にもそのまま当てはまります。

反発の要因は「指導内容」ではなかった

冒頭のケーススタディの場合、上司の「指導」に部下が反発するのは、おそらくそのアドバイスの妥当性だけが問題ではないはずです。それ以上に、「上司の指導」という裏に見え隠れする強制力への反射的な抵抗が、「つい一言返さずにはいられない」という行動につながっているのでしょう。

「よかれ」と思ってのアドバイスであり、実際には役立つプラスの内容であっても、「やらされている」「決め付けられた」と感じた瞬間、人の心には無意識的に抵抗の気持ちが生まれます。「よかれ」との思いから懸命に説得すればするほど、言われた側の反発を招いてしまう。そんな皮肉な構造が社会には潜んでいます。

では、組織のリーダーはどうすれば「北風」役から脱することができるのでしょうか。現時点で有効とされる手段のひとつが、「問いかけ」です。