「やりたいことしかやらない」現象が…
“寄り添うマネジメント”を推し進め、行き着いた着地点の一つが、「やりたいことしか、やらない」という自由だった。
「うちの仕事は基本、営業兼○○と、営業がメインです。しかし、チラシ作りを任せた人が、『自分はチラシを作っているから、営業に行かなくても許される』と、自分の存在意義を営業以外のとことに見出すようになったり、『自分は文具の仕事がしたいです』と産業用にシフトする会社の経営方針に従わなかったりするケースなどが出てきました。
そして、一緒にお客さまへ貢献する仲間というよりも、『会社側が、自分たちのことを良くしてくれるんでしょう』と自分達がお客さまになってしまった。管理職が機能しなくなり、私が逐一、現場に行って指示を出さないといけない状態でした。利益率の減少を踏まえ、これでは会社が立ちいかないと、カチッとしたピラミッドの組織に変えたのです」
今、熊谷さんは直属の部下としか話さない。フラットな組織を試した経験から、熊谷さんはこう考える。
「フラットの理想って、みんなが経営者意識を持つという考えだと思うのですが、経営者と同じ給料を払えないのに経営者意識を持てというのは、経営者の自分勝手な主張だなって思いますね」
フラットな組織はピラミッドを突き詰めて極めた先にある、遠い理想であると位置づける。
社員が“全力疾走”するようになったきっかけ
コロナ後、熊谷さんは評価体系と報酬体系の改変にも着手した。そもそも社長就任時には、評価制度が何もないという状態だった。
「役員が『期待を込めて、彼を課長に』というレベルでしたから、社長就任後すぐに評価制度を導入しました。最初は、定性的な評価項目を取り入れたんです。しかし、評価する人によってあまりに差が大きかったので、コロナ後は全部の評価項目を定量化しました。数字で出すようにしたんです。例えば、固定費をいくら下げた、業務改善提案を何件出した、業務上のミスは何点とか、全て数字で見るようにしました。もちろん、課長や部長になる上での一定の定性的要件は設定していますが、客観的に判断できるものを基準に変えたのです」
また、評価頻度もこれまで年に1回だったものを、四半期に1度に変えた。
「社員にとってはリスタートできる機会を増やしたことで、毎期、全力疾走してくれるようになったことが大きいですね。こちらには、評価項目を1年で4回試せるという利点もありました。営業であれば粗利での評価を最重視しますが、見積もり件数を何件取ってきたとか、重視する項目を変えられるので、多角的に評価ができるのはいいですね」

