残暑の今、9月病の予防につながる食事は何か。産業医の森しほ氏は「この時期は心身の調子を崩した方が多く来院する。体調不良の裏には栄養不足が隠れているかもしれない。ぜひ“一口かじるだけで栄養がとれる食事”から取り入れてほしい」という――。
オフィスのデスクで仕事中に頭を抱えるビジネスマン
写真=iStock.com/ArLawKa AungTun
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5月病と似て非なる「9月病」の原因

ゆうメンタルスキンクリニック医師の森しほです。産業医として、働く方のメンタルヘルス相談に携わっています。

さて、8月も終わりの時期になると、こんなご相談が増えてきます。

「最近、会議の内容が途中から頭に入ってこないんです」
「メールを一度読んだだけでは、内容が理解できなくなったんですが……」
「仕事が終わる頃に、もう何も判断したくなくなります。能力が落ちたんでしょうか?」

このように調子を崩してしまう方が多くなります。いわゆる「9月病」です。「5月病」と同様、季節の変わり目に心身の調子を崩している状態のことで、どちらも正式な医学的診断名ではありませんが、背景にはうつ病や睡眠障害、身体疾患などが隠れていることもあります。

9月病と5月病の原因は少し異なります。5月病は、春の環境変化が大きなきっかけになります。入学や就職、異動など、新しい生活が始まった緊張が少しゆるみ、ゴールデンウィークを境に疲れが出てくるのが特徴です。

一方の9月病は、夏の暑さによって睡眠不足や食欲低下、自律神経の乱れが起きやすくなっているところに、長期休暇による生活リズムの乱れ、休み明けの仕事への切り替えなどが重なり、心身の疲れが表面化しやすくなります。

つまり、5月病は「新しい環境への適応疲れ」、9月病は「夏の疲労や生活リズムの乱れの蓄積」という違いがあります。

9月病の影に隠れた「栄養不足」

メンタルクリニックでも、9月病のような症状で「うつ病かもしれない」「更年期だろうか」「もう認知症?」などと心配し、受診される方が多くいらっしゃいます。

この方々の血液検査結果を見ると、亜鉛などの栄養素が不足していることがあります。また、お話をうかがうと、食事から摂るたんぱく質がかなり少ないように見受けられることもあります。

【Close-up:「9月病」を遠ざける食&運動】はこちら
【Close-up:「9月病」を遠ざける食&運動】はこちら

暑さで食欲がなく、朝はコーヒーを飲んだだけで出社し、昼食はお蕎麦のような主食だけ、夜は暑さと疲れでアイスやビールを口にして、そのまま寝てしまう……。そんな日が続いている方も少なくありません。

食事面を指摘すると「うつだと思っていたら、栄養不足だったのか!」と納得される方もいますが、実際はもう少し複雑です。栄養不足だけが原因で不調を起こしている方もいれば、うつ病や更年期障害、甲状腺疾患、睡眠障害などに栄養不足が重なり、症状が強くなっている方もいらっしゃるからです。

いずれにせよ、脳も筋肉も、日々食べたものを材料にして動いています。材料が十分に届いていなければ、いつもの力を出しにくくなるのは不思議ではありません。

暑さが少し落ち着いたのに、なぜか疲れが取れない、朝から頭がぼんやりする、以前なら簡単にできた仕事に、妙に時間がかかる。そんなときは、この夏に何を食べていたのかを振り返ってみてください。