メンタルと栄養の深い関係
食事からの摂取カロリーが十分でも、必要な栄養が足りていないことがあります。パフォーマンスを発揮するために大切な栄養素についてお話ししたいと思います。
まず、たんぱく質です。神経伝達物質やホルモンなどをつくる材料となります。2026年のFotouhi Ardakaniらの研究では、たんぱく質摂取量が多い人ほど、抑うつリスクが低い可能性が示されました(注1)。
ただし、この研究だけで「たんぱく質でうつが治る」とは言えず、健康な人ほど食事を摂れていた可能性もあります。それでも、菓子パンだけ、麺だけ、サラダだけという食生活が続いているなら、たんぱく質を足す意味は十分にあります。
次に亜鉛です。亜鉛は、免疫や皮膚などにかかわる栄養素ですが、脳や心とも深い関係があります。2020年、横川らの研究(注2)では、約2000人の健診受診者を対象に血清亜鉛値を調べたところ、男性の約半数、女性の約4割で「境界域」とされました。「欠乏」とまではいかないけれども健康のために充分な量とはなっていないという意味です。極端な不足はなくとも、少し足りない状態が長く続いていないか、日々の食事を見直してみましょう。
また「うつ状態の方の血清亜鉛濃度は健康な方よりも低かった」という研究結果もあります(注3)。このデータから「うつ病の原因は亜鉛不足」とは言えません。食欲低下などにより亜鉛摂取が減っている可能性もあります。ただ、亜鉛が欠乏している場合、食欲低下や倦怠感といった症状や、皮膚炎といったお肌のトラブルが起こることも知られています。
そして、カルシウムです。カルシウムは健康な骨の維持に必要なだけでなく、神経の働きを正常に保つ点でも重要な栄養素です。不足するとイライラしやすくなったり、落ち着かなくなったりする症状につながることがあります。
注1:Amirmahdi Fotouhi Ardakaniほか“Association Between Total, Animal, and Plant Protein Intake and Risk of Depression in Adults: A Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis of Observational Studies”
注2:横川博英ほか“Demographic and clinicalcharacteristics of patients with zincdeficiency: analysis of a nationwideJapanese medical claims database”
注3:Krzysztof Styczeń ほか“The serum zinc concentration as a potential biological marker in patients with major depressive disorder”
まずは「口に入れられるもの」を選ぶ
「食事を見直しましょう」というと、急に構えてしまう方は少なくありません。
「毎日忙しくて、スーパーに行く時間がない」
「帰宅が遅いので、料理をする余裕がない」
「何品も作ったら、今度は食器洗いが大変になる」
そんな声をよく聞きますし、こうした気持ちは私自身もよくわかります。
食事を整えるというと、「毎日、何品も手作りしなければならない」と考えてしまいがちですが、実はそんな必要はありません。忙しいとき、食欲が落ちているときは、まず「口に入れられるもの」を選ぶことが大切です。

