ビニールカーテンで日本一の会社が東京・神田にある。石塚3代目社長の熊谷弘司さんは、父親の代で縮小したファイルや手帳カバーから生き残りをかけて産業用商品に事業構造をシフトさせた。コロナ特需をへて大失速するも、現在は熱中症対策を売りに全国から注文が殺到している。ノンフィクションライターの黒川祥子さんが取材した――。

酷暑でスポットライトを浴びる商品

酷暑が猛威を振るう昨今、ビニールカーテンがスポットライトを浴びていることをご存じだろうか。ビニールカーテンといえば、コロナ禍の際、レジと客とを仕切るものとして普及したが、普段、活躍しているのは倉庫や工場などの労働現場だ。ここで働く人たちを熱中症から守るものとして、産業用ビニールカーテンが今、酷暑より“アツい”のだ。

このビニールカーテンでシェア1位を誇るのが、1955年に創業された石塚株式会社だ。ビニールカーテンの素材となる塩化ビニールの卸売からスタートし、2代目は文具や日常雑貨など加工業にも進出、現在の3代目で文具から産業用にシフトし、建設業許可も取得し、素材の卸売、加工だけでなく施工まで担う体制となっている。

祖父が興し、父が裾野を広げた家業を継いだ3代目社長、熊谷弘司さんは44歳。爽やかな笑顔に、優しい人柄が滲み出る人物だ。

石塚3代目社長、熊谷弘司さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
石塚3代目社長、熊谷弘司さん

ビニールカーテンで日本一

今、なぜ、ビニールカーテンが工場で引っ張りだこになっているのだろうか。

「そもそもビニールカーテンは雨や風、埃、虫などの対策として工場で使われるものですが、熱中症対策としては、工場の空間全体を冷やすより、ビニールカーテンで人がいる空間だけを仕切って、そこにのみ空調を効かせて空調効率を上げるという使われ方をしています」

工場に施工された防虫のれん
写真提供=石塚
工場に施工された防虫のれん

2025年6月1日、国が職場での熱中症対策を義務化したことで、社ではさらなる多様な要請に応えるためにビニールカーテンに限らず、工場全体で熱中症予防につながる商材を幅広く展開することとなった。

「熱には、5つの侵入経路があります。屋根、壁、窓、そして溶鉱炉などの機械熱、そして空間に滞留する熱ですね。アルミの遮熱シートは屋根に貼ると熱を97%跳ね返し、工場内の温度を11度下げます。機械や炉の遮熱には210度に24時間耐えられるアルミシートを溶鉱炉などへ施工することで、200度から25度に下がったという実績もあります」

シートやカーテンの素材は国内メーカーで大量生産されているものを使うが、工場によって間口が全て違うため、カスタマイズしてオーダーメイドで施工する。施工実績は、2025年度で年間約200件。2023年の東京商工リサーチの調査では、ビニールカーテンに関わる売上高No.1を獲得した。

「調べていなかっただけで、ビニールカーテンというものが世に出てからずっと、うちが1位だったと思うんです。卸から加工、施工まで、一気通貫でやっている他社はないですし、そこがうちの強みですね」