生き残る道がこれしかなかった
熱中症対策義務化という社会の要請にしっかり応え、業績を上げることができたのは、父の代ではファイルや手帳カバーなどの文具や雑貨が4分の3を占めていた事業構成を、産業用ビニールカーテンへシフトチェンジを果たしたからだ。
「文具が海外で安価に生産されるようになり、さらにペーパーレスの時代になり、文具の仕事はどんどん減っていき、産業用へシフトするしか生き残る道はなかったわけです。施工もできるように建設業許可を取得し、卸から加工、施工までワンストップでできるようにしたことで、利益率は確実に向上しました」
コロナ特需で利益率2倍に
2020年に入り、間もなくのこと。とにかく、注文の電話が鳴り止まない。コロナ禍が日本全国を覆い、セブン‐イレブンがレジ前にビニールカーテンを設置したことがテレビで報じられた直後、電話が止まらなくなった。
「それまで工場だけで使っていただいていたものが、日本全国の店舗に広がったので、机に座っているだけで注文が来る状態になったのです。最大瞬間風速は、3カ月続きました。店舗から始まり、次に医療機関、介護施設へと広がって、まさに特需でした。ピークを過ぎてからも強いニーズが、1年半は続きましたね」
2019年と比較して、2020年の利益率は2倍以上に。しかし、そのままイケイケどんどんが続くわけがない。コロナ禍を脱し、世が平常に戻った時期、粗利は減少に転じた。
「みんな、何もしなくても注文が来る状態に慣れてしまって、あぐらをかいてしまったんです。このままではいけないと、まず組織の形を大きく変えました」
「フラット組織化」で大失敗
コロナ禍以前、社長に就任した直後の熊谷さんは、フラットな組織づくりを目指した。
「私自身、仕事に対して自分の裁量で取り組むほうが楽しいと思っていますし、みんなもそのほうがいいだろう。組織と組織の間に落ちたボールを誰が拾うのかという問題を見てきたので、みんなが自由に動ける状態にしたいと思い、フラットな組織にしたんです」
そこには、社長と末端社員の意思疎通を分断するという、古参幹部の弊害を排除するという意図もあった。
「古参幹部の機能を無くすために、その人たちを飛ばして、私が直接、部下とやり取りをするようにしたんです。最初の頃は問題があぶり出されるなど、建設的な意見を吸い上げることができ、うまくいっていました」
熊谷さんは社長として、会社の方針を社員に浸透させるためにどうすればいいのか、一貫してその手法を模索してきた。
最初に行ったのは年に1回、社員一人一人と面談するという、社員に“寄り添うマネジメント”だった。しかし、何ごともやりすぎはよくないと熊谷さんは振り返る。「寄り添いすぎちゃった。甘やかしすぎちゃった」と、今は思う。


