高い概算金を支えた「政府買い入れ」への期待

JA農協としては、いくら概算金が仮渡金だと言っても、概算金が3万円で最終価格が2万円となったとき多額の金額を農家から徴収するわけにはいかない。それを避けるため高いまま農協販売手数料込みの3万7000円という相対取引価格で売ると、売れない在庫が増えて金利倉敷料が負担になる。高い概算金は払えないはずだ。それなのに、JA農協は前年産を大幅に上回る概算金を農家に払って集荷した。

市場原理ではありえないことが起きたのには何かの歪み・カラクリがあったからだ。25年産米には特殊な事情があった。それが放出した備蓄米の在庫減少を埋めるために予想される農水省による買い入れである。

30kgの紙袋で保管される政府備蓄米
30kgの紙袋で保管される政府備蓄米(写真=農林水産省/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

JA農協が在庫を抱えても、政府が備蓄米を買い入れると、JA農協が集荷・保管する在庫は政府の在庫に転換する。JA農協は金利倉敷料を負担せずに高い相対取引価格を維持できる。生産が増えても在庫を増やせば、市場への流通量は制限でき、JA農協は金利倉敷料を負担せずに高い相対取引価格を実現できる。幸い、農水大臣はJAファーストの農林族議員である。JA農協の期待を裏切ることはないだろうとJA農協は予想した。

これが、25年産米が豊作にもかかわらず、かえって米価が大幅に上昇した理由である。

政府が動かず、崩れたJAの計算

ところが、計算違いが起こった。

高市官邸は物価高対策に逆行するとして備蓄米買い入れに難色を示している。慌てたJA農協は政府が備蓄米を買い入れるよう要請活動を行っている。それがないと25年産の米価を上げた前提が崩れてしまうからだ。

このままだと、JA農協は26年産が集荷・販売される前に25年産を投げ売りして過払いとなった概算金のかなりの部分について、農家に返還を求めるか、過剰在庫を抱え続けなければならない。まだ相対取引価格は通常年の1万5000円に比べ依然3万円を超える水準にあるが、出来秋を前にして一時的に価格が下がったのは(7月は3万2486円に上昇)、政府が買い入れないかもしれないという不安の表れと言えるだろう。