老後の生活は、年金だけで成り立つのだろうか。ルポライターの増田明利さんによる『今日、年金暮らしになった』(彩図社)より、68歳になった今もアルバイトを続ける独身男性の暮らしの実情を紹介する――。(第1回)
アパートのベランダから外を見るシニア男性
写真=iStock.com/FG Trade
※写真はイメージです

年金12万円だけではとても暮らせない

氏名:堀田恒夫(68歳)
現住所:神奈川県大和市
家族構成:単身、結婚歴なし
年金額:12万6000円
その他の収入:診療所の患者送迎ドライバー、月収5万3000円前後
住居形態:賃貸アパート
維持費:家賃4万7000円
健康状態:脂質異常症、肩関節周囲炎

今日は待望の年金支給日。昼イチで郵便局へ行き、振り込まれた2カ月の年金を全額引き出し、大通りの反対側にある信用金庫に直行。半分を来月用として預け入れた。振り込まれた金額は2カ月分で25万2000円、1カ月分は12万6000円だ。これで1カ月暮らすのは難しいので今もアルバイト的な仕事をしている。

「職を転々としていたし請負で自営業もやっていたこともある。安月給の上に国民年金だけだった期間が15年ぐらいあるんです。これじゃ年金をたくさんもらえるわけない。働かなきゃ破綻しちゃうよ」

堀田さんは76年に地元の工業高校を卒業して水産加工会社に就職。工場の作業職として勤めていたが、82年前半に会社が倒産。数カ月後に隣県の木材加工会社に転職、数年は安定した生活ができていたが、87年に円高不況の影響でまたも会社倒産に見舞われた。

バブル崩壊後にリストラで退職

「地元にいたのはここまでです。職安に来ていた都内の建築会社の広域募集に応募し、作業職として採用してもらえたので上京したんです。社員採用だったので社会保険に入れたし、バブルが来たので数年はとても良かった。東京の会社はこんなに高給なのかと思った」

ところが92年の前半にバブル景気がしぼみ不景気に。94年の暮れにリストラがあって退職することになった。地方の高校卒で現業職を転々、特技や資格はなし、年齢も37歳。世の中全体が不景気だったから、これでは簡単に新しい仕事が見つからない。そこで始めたのがバイク便のライダーだった。

「95年の春先から請負で始めまして。90ccのスクーターにリアボックスを付けて都内をあちこち走り回っていました」

完全歩合制で報酬は月30~33万円ぐらい。

ただし社員ではないので社会保険はなし、自分で自治体の国民健康保険と国民年金に加入。仕事に必要なガソリン代、オイル代、その他のメンテナンス費用も全て自己負担。