歴戦のITエンジニアは知っている

これは確かに美しい。若い理想に燃えたコンサルタントが目指したくなる姿だ。

しかし、コンサルタントではない歴戦のITエンジニアは、それが実現できないことをよく知っている。そして、実現すべきでないこともよく理解している。

システムを移行することの難しさ、個別対応が必ず発生し、共通システム、統合システムというものはいずれ崩壊していくことをよく知っているからだ。

パソコンでソースコードを確認する2人のITエンジニア
写真=iStock.com/cofotoisme
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そして、個別システムがバラバラに動いていることにも、例えばサーバーの障害があってもその影響が限定されるといったメリットがあることを知っているからだ。

そうしたシステムも実は、提供している会社は業務領域にもよるが全国を数社のベンダーでほぼカバーしていることも多く、同じ会社が提供しているシステムであれば、新しい業務への対応も比較的効率的に行うことができる。

実際、標準化システムへの移行でも、TKCのように2026年3月までに標準化対応をすべて完了した、と発表した会社もある。

「クラウドにすれば安くなる」思い込み

また、クラウドにすれば安くなる、という思い込みは、すでに多くの現場のITエンジニアには否定されている。

スタートアップのシステムや、一時的にアクセスが集中するようなシステムの場合にはクラウドの活用は有効だが、システム変更があまり行われない、月次処理が中心の行政システムではオンプレのほうが運用費を抑えることができることは、現場のITエンジニアならわかっている。

さらに、昨今の円安でクラウド費用はどんどん値上がりしており、その費用増加に悩んでいる企業も多い。

さらに自治体システム標準化では、結局、これが標準だというモデルは決められたが、システムは一つにはならなかった。各自治体が今使っているシステムを少し改修して、標準化に対応した、という形を作っただけだ。

そして、そのシステムのサーバーだけをガバメントクラウドに移しただけだ。

データ活用という観点では、そもそもシステムを標準化する必然性は薄く、それぞれのシステムから出力するデータを標準化し、それを統合する、というアプローチもあったはずだ。

実際、マイナンバーのシステムはこの考え方に近く、「集約した個人情報を各行政機関が閲覧できる『一元管理』の方法をとるものではない」もので、従来の行政システムと同様に個別のシステムで分散管理し、必要な場合のみネットワーク経由で照会・提供するものだ。

結局、自治体システム標準化とは、全国が一つのシステムになったわけではなく、数千あったシステムが少し形を変えて、クラウドに乗せ変わっただけだから、例えば給付付き税額控除が導入されたとしても、依然として数千のシステムを個別に改修していく必要がある。