メロンとレコードが最適だった理由

人付き合いというのは、老若男女問わず、誰にとっても悩みの種だろう。この「プレジデント」でも、時折人間関係に関する特集が出る。誰しも、気の合わない相手とどう折り合うかに、日々頭を悩ませているに違いない。私自身はあまり社交的ではないが、それでも半世紀近く、永田町で数えきれないほどの人と対峙してきた。その経験から言える人付き合いの極意は、つまるところ「相手をどこまで知りえたか?」と「それをどのように伝えるか」だと思っている。

付き合いの「うまさ」がはっきり出るのが、プレゼントである。今年5月、高市総理がオーストラリアを訪れた際、アンソニー・アルバニージー首相に静岡県産のクラウンメロンと、日本のメタルダンス・ユニット、BABYMETALと、ロックバンドのマン・ウィズ・ア・ミッションのレコードを贈った。正直に言えば、私はどちらも知らなかった。それは置いておくとして、「首脳同士の贈り物が、果物と2枚のレコードだけでいいのだろうか?」と思った人もいるかもしれないが、私に言わせれば、あれで正解だったと思う。

アルバニージー首相は音楽好きで知られており、返礼には豪州の有名バンド、AC/DCのサイン入りドラムヘッド(ドラムの叩く部分に張られた革)とレコードを贈ったという。お互いがヘビーメタル好きだということを知っているからこそのやりとりである。

メロンにも、実は裏の意味があった。オーストラリアは検疫が厳しく、日本産のメロンの輸入を解禁したばかりだったのだ。お祝いと売り込みを、一つの果物に込めていたわけだ。外交の土産は、外務省などから候補がいくつも挙がり、その中から相手に合わせて選ぶ。誰に何を贈るか自体が、立派な外交なのだ。

肝心なのは値段ではなく、どれだけ相手を調べたかだ。もし日本側がレコードではなく、アルバニージー首相の好みかどうかもわからない工芸品を渡していたとしたら、オーストラリア側には「日本は自国のアピールだけを考えているのか?」と思われてもおかしくない。だから、金額の多寡ではなく相手の好みを知っておくことは非常に大切なのだ。手間を惜しんだことは、必ず伝わるもので、一度そう思われれば、次からは軽く扱われる。

私が思い出に残っているのは、小泉純一郎元総理に首席秘書官として仕えていたとき、当時の大統領だったジョージ・W・ブッシュ氏に贈った「明治神宮の破魔矢」だ。

「破魔矢」という言葉の通り、「魔を破る」という意味の縁起物として贈り物にされることがあるが、私は単なる縁起物として選んだわけではない。ブッシュ氏は、過去に選挙で苦境に立たされながら逆転当選したことがある。その選挙の最中に破魔矢をプレゼントで贈られており、それ以来ブッシュ氏はその破魔矢をとても大切にしていたという。ブッシュ氏が破魔矢を大切にしていると知っていたからこそ、明治神宮の破魔矢をプレゼントしたのだ。ブッシュ氏はとても喜んでおり、どんな金銀財宝を渡されるよりも嬉しそうに見えた。もちろん、破魔矢だけのおかげではないが、小泉・ブッシュの関係が最後まで良好だったことを考えると、あの矢を選んでよかったと思っている。

ブッシュ氏からすれば、矢を贈られたことは「小泉は自分のことをここまで調べているのか」という驚きにつながったと思う。それは日本に対して「付け焼き刃で接したら見破られるだろう」といういい意味でのプレッシャーとなる。だからこそ、贈り物は「何を贈れば喜んでもらえるか?」という視点でリサーチをすることが重要なのである。

ブッシュ元米大統領から贈られたボールでキャッチボールする小泉純一郎元総理。プレゼントを贈る際、飯島氏は「金額や希少性は二の次」と語る。「相手がどうしたら喜んでくれるのか」という原点に立ち返ることこそが、贈り物の極意なのかもしれない。
贈り物の極意
ブッシュ元米大統領から贈られたボールでキャッチボールする小泉純一郎元総理。プレゼントを贈る際、飯島氏は「金額や希少性は二の次」と語る。「相手がどうしたら喜んでくれるのか」という原点に立ち返ることこそが、贈り物の極意なのかもしれない。

なぜ私はゴルフをしないのか

ここまで贈り物の心くばりを説いたが、私自身はプライベートの付き合いがかなり悪いほうだと思っている。

ゴルフの道具を2組も持っているが、人生で一度もクラブを握ったことがない。有名な会員制クラブに会費を納めていたこともあったが、自分でそこを使ったことは、ただの一度もないのだ。酒席にも出ないし、飲みにも行かない。そもそも酒を飲まない。周りはとうに諦めて、もう何十年も私を誘ってこない。付き合いの悪い男だと思われているだろうが、苦にならない。ゴルフを覚える暇があったら、その分、新聞を一紙でも多く読みたい。ただ、それだけのことである。

(写真=CNP/時事通信フォト)

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