首の角度ひとつで運命が変わる
リーダーや経営者というものは、毎日、当たり前のようにカメラを向けられる。総理や上場企業の経営者ともなれば、朝から晩まで写真を撮られるのが日常で、もはや撮られることが仕事の一部といえるかもしれない。
写真というのは怖いもので、撮り方によっては事実と異なる印象を与えることができる。最近は暑い日も多いが、たとえば目に汗が入ってハンカチでそれをぬぐったとする。別に悲しんでいるわけでも、感極まっているわけでもないのに、この瞬間の写真があれば事情を知らない人には泣いているようにも見せることができる。
にもかかわらず、世の中には「撮られ方」を意識していない人が多い。そこで、私が官邸で身につけた、写真や映像に撮られるときの心得を紹介しようと思う。
まず知っておきたいのは、撮る側には2種類のカメラがあることだ。動画を回す映像用のカメラと、新聞などのスチール、つまり写真を撮るカメラだ。この2つを、同じ位置にまとめてセッティングさせてはいけない。セッティングの段階で映像は後ろ、写真は前、というように、撮る角度を散らしておくべきだろう。写真と動画でアングルがひとつに固定されてしまうと見え方が画一的になってしまい、印象も固定されてしまうからだ。アングルが違えば「写真だと覇気がないように見えたが、動画だとそうでもないな」という形で、印象が画一化されることを防ぐことができるのだ。
次に意識したいのが動線だ。たとえば政治家と秘書が連れ立って歩くなら、政治家本人は必ずカメラに近い側を歩き、秘書は遠い側を歩く。これが鉄則である。これは経営者と広報、タレントとマネージャーなどの関係でも変わらない。付き添いのほうが大きく写り込んでしまうと、どちらが主役かわからない妙な構図になってしまう。
実際、ある企業の謝罪会見では、当事者が代理人と肩を並べて写っていたため、まるで代理人に連れられて渋々謝罪をしているように見えたことがあった。こうなれば謝罪会見をしてもイメージは回復せず、悪印象はぬぐえない。企業にとってはかなりの痛手であったろう。
そして、何より大事なのが目線である。視線を下に落とすのは、絶対にやってはいけないことだ。うつむいた一瞬を恣意的に切り取られれば、それだけで弱々しく、後ろめたそうに見えてしまう。目線は常に正面を向き、ほんの少し上を向くくらいが、最も堂々として見える。角度にすると5度前後だろうか。あまり上を向きすぎても変だが、うつむいているよりはマシに見えることが多い。
時に、実力や手腕とは関係なく評価されてしまう「印象」を味方につけるため、飯島氏はカメラの位置や歩く距離などを緻密に計算していたという(写真は6月17日に撮影された、高市早苗首相の内外記者会見)。
私が街で歩く人を観察してみると、半分くらいの人がやや下を向いて歩いている。目線を下に向けてスマートフォンをチェックする習慣があるからかもしれないが、これでは政治家や経営者として、良い印象を与えることはできないだろう。
普段からうつむく癖のある人は、中身や手腕とはまるで関係のないところで損をしていることが多いと思う。これは撮影のときのみならず、商談や会食でも同じだろうから、撮られる立場でない人も意識してみてほしい。
ただ、私が首席秘書官として仕えた小泉純一郎元総理は、もともと全く下を向かない人だった。だから私も取材を受ける際の立ち位置や姿勢について何ひとつ注文をつけなかった。その結果、自然体の印象を与えることができたのかもしれないが、これは例外的なケースだろう。多くの人は意識をしないと、写真に写る際はどこか不格好になってしまう。
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