日本製鉄×USスチールは「買収ではなく投資」に
石破茂首相は、米国を訪問してドナルド・トランプ大統領との日米首脳会談を無事に終えることができた。初めてのホワイトハウス、そして相手があのトランプ大統領ということを考えれば、大成功だといえるのではないか。
事前の報道では、今回の訪米について、かつて、安倍晋三元首相がトランプ大統領と特別な信頼関係を築いていたことと比較して、期待よりも心配の声が大きかったと思う。安倍元首相と石破首相のキャラクターの違いや、石破首相の外交経験を考えれば、苦戦もやむなしという予想が多かった。
それが、フタを開けてみれば、びっくりするほど上手くいった。
何といっても、ジョー・バイデン前大統領の禁止命令で暗礁に乗り上げていた、日本製鉄によるUSスチールの買収計画について、「買収ではなく投資」という説明で、計画の可能性を復活させた。株式取得による完全子会社化を目指していた日本製鉄にとっては、満点とはいえないかもしれない。しかし、大統領選期間中には「買収は絶対に反対。この取引を阻止する」と言っていたトランプ大統領に対して、日本製鉄がUSスチールに関わることを認めさせたのは大きいのではないか。
このUSスチールへの投資も含め、石破首相から「対米投資額を1兆ドルといういまだかつてない規模まで引き上げたい」と提案したことも、トランプ大統領を喜ばせたという。外務省の発表資料にも「トランプ大統領から、日本企業による対米投資に対する強い歓迎の言葉がありました」と出ていたから、米国側の満足度は相当高かったと思われる。買収はダメで、投資ならOKというのは、明確な米国の利益を求めるトランプ大統領らしい。このほか、日本の防衛力の抜本的強化の姿勢や、米国が輸出強化を図っている液化天然ガス(LNG)の輸入増なども、トランプ大統領は大歓迎だった。
もちろん、石破首相はトランプ大統領を喜ばせていただけではなく、安全保障の分野などでは、日本の立場をきちんと主張している。
まず、日本外交の基本の一つである「自由で開かれたインド太平洋」の実現への協力で一致し、日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることをあらためて確認した。第5条の条文を確認すると「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する」とある。平たくいえば、日本が攻撃を受けたら米国が守ることを定めている。つまり、今回、トランプ大統領は尖閣諸島が日本であることを認めて有事の際には、米軍が守ることを公的な場で宣言したといえる。
さらに、北朝鮮についても、石破首相から拉致問題の即時解決について米国側の理解と協力を求め、トランプ大統領から全面的な支持を得た。これで、日本政府は安心して北朝鮮との交渉に入ることができる。
私の予想では、トランプ大統領は金正恩総書記との米朝首脳会談を準備していると思う。前回の任期中には、シンガポール、ハノイ、板門店で3回会っている。そして、会うたびに日本の拉致問題についても言及している。わかりやすい成果を求めるトランプ大統領は、現在ロシアとの関係を深めている北朝鮮に何らかの働きかけを行うのではないか。そして、亡き安倍元首相との約束を守って、今回も拉致問題解決を訴えてくれるだろう。
しかし、石破首相は米朝首脳会談の開催前に、日朝首脳会談を行うべきだと考える。米国が動く前に日本が独自で解決に向けた行動を起こしてほしい。私の読みでは、いま日本が動けば、金正恩総書記は日朝首脳会談を受けると思う。
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