「自社ビルでの謝罪会見」を絶対に避けるべき理由
フジテレビの10時間以上におよぶ記者会見は、企業の不祥事対応としては最悪だった。中居正広氏の女性トラブルとフジテレビとの関係について私は語るべき立場にないので、今回は「不祥事におけるメディア対策の重要性」に焦点を絞って謝罪会見のリスク管理について述べたいと思う。
そもそも、中居氏のトラブルを認識したうえで対策をとらなかったという初動が大問題なのだが、最初に出席者を限定した閉鎖的な記者会見を行ったことが失敗だった。この対応では「形式的に会見を行えば、それで許されるだろう」と考えていると思われても仕方がない。それでもこの時点では、まだ挽回できる可能性があったが、さらにフジテレビはやり直しの会見の場所と時間を間違えて、最悪の結果を招いたといえる。
そして、記者会見の会場をお台場にある本社内の500人以上を収容できるイベントスペースに設定したのが最大のミスだ。こうした謝罪会見では、絶対に自社の施設を使ってはいけない。自社の不祥事に関する謝罪会見は、「ここまでにさせていただきます」と記者の質問を打ち切るのが難しい。例えば、福島第一原発事故の際に、東京電力は本社ビルで記者会見を開いたため、記者たちがほぼ泊まり込みのような状況となり、連日連夜の報道対応で業務に支障が出るほどだったという。
もしもホテルの宴会場など外部の会場であれば、「会場の都合で○時まで」と時間を区切ることができる。フジテレビも、記者会見が日付を越えて10時間以上の対応を強いられることは避けられたはずである。
また、広い会場で取材希望者をすべて受け入れたのもよくなかった。これも初回の記者会見で出席者を限定したことを批判されて門戸を開くという判断になったのだろうが、これが会見の長時間化を招く原因となった。今回の事案を考えれば、フジテレビ側が話せることが少ないのは予想できるはずである。にもかかわらず、多くの出席者を受け入れてしまったために自己アピールを優先するような記者も目立った。会見が悪目立ちする原因になってしまったのと同時に、企業としての対応力の低さを露呈することになってしまったと思う。
そして、記者会見の開催時期もよくなかった。一般視聴者からの批判が広がり、スポンサー離れも進んだため、迅速に記者会見を開くことを決めたのだろうが、他のイベントや大事件に合わせれば、翌日の新聞の一面やテレビのトップニュースがフジテレビ一色になって日本中から批判されることは避けられたのではないか。かつては週末にはワイドショーがなかったので、話題を長引かせたくないときは、金曜の午後に記者会見を設定したものだ。最近は土日もワイドショーがあるため、この手は使えなくなったが、報道の扱いが小さくなるタイミングを探すことはできたはずだ。この10時間会見の翌日、中国発の生成AIが話題になるなどで、フジテレビに関する報道は減少した。あと1日ずれていれば、状況は違ったかもしれない。
また、会見とほぼ同じタイミングで、事案の発覚のきっかけとなった週刊文春の記事に誤りが報じられ、中居氏のトラブルにフジテレビの社員が直接的には関与していないことが明らかになったが、フジテレビのイメージは回復せず、スポンサーも戻ってこなかった。会見を開く前に、文春の訂正内容を出席した記者たちと共有できれば、状況は違っていただろう。フジテレビでは、記者出身の役員を中心に今回の対応を進めたと聞いているが、問題がここまで拡大すると予測できなかったのだろうかと思う。
1月27日16時にフジテレビ本社で行われた記者会見は10時間23分にわたり、日付が変わっても会見が続いた。飯島氏は「会見は『会見で何をするか』ではなく『会見までに何をするか』で決まる」と、自らの秘書官時代を振り返って語った。
記者が知りたいことは質疑応答の前に全部話す
私が報道対応に携わっていた小泉内閣では約6年間の任期中、総理大臣が公の場で謝罪することはなかった。大小さまざまな事柄で批判を受けることは度々あったが、騒ぎが大きくなりそうな問題、最近の言葉でいえば炎上しそうな問題が起きたときは、毎日のぶら下がり会見で早めに説明することを徹底していた。週刊誌が火をつける前に、総理の口から説明することで、炎上を防いだのである。
強いていえば、年金未納問題への対応は厳しかった。任意加入の時代だったとはいえ、小泉純一郎首相(当時)が落選した際に社員として厚生年金に加入させてもらった会社で勤務実態がなかったことを追及されてしまった。首相は、事実関係を認めてその会社への感謝を述べたが、国会での野党からの度重なる質問に「人生いろいろ、会社もいろいろ」と答弁したことが話題になった。今のようにSNSが発展していたら炎上していたかもしれない。
小泉内閣時代は、不祥事への対応でなくても、あらゆる記者会見においてメディアが知りたいことを予測して徹底的に準備した。そして、質疑応答の前に記者側が知りたいことを全部話すのである。相手が知りたい情報をきちんと伝えることが、報道対応の基本である。下手に隠そうとすると、かえって不誠実な印象を与えてしまう。
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