米ウ首脳会談でまさかの激しい口論
米国のドナルド・トランプ大統領の外交に世界中が注目している。
石破茂首相はトランプ大統領との首脳会談を無難に乗り切ったが、2月28日に行われたウクライナのゼレンスキー大統領との会談は、報道陣の前で激しい口論となった。その結果、米国がウクライナへの支援を続ける条件と見られていた鉱物資源の権益をめぐる合意文書への署名も見送られ、停戦交渉も暗雲が立ち込めている状態だ。
米国の負担が大きい支援に消極的なトランプ大統領は、早期の停戦という結果を求めてウクライナの頭越しにロシアとの交渉を進める一方、ゼレンスキー大統領が求めるNATOへの加盟など停戦後の「安全の保障」については否定的で、会談前から両者の対立は深まっていた。この決裂はある程度予想されていた結末ではあるが、ウクライナの平和は遠のいてしまった。
「プレジデント」の今号が発売になるころには交渉がうまくまとまり、一刻も早く平和が訪れるよう願っている。
たしかに早期停戦の実現は望ましい。急がなければ両国ともに犠牲者が増える。ウクライナを助けるための提案という米側の主張も理解できる。しかし、停戦後に現地の人々がさらに厳しい状況に追い込まれるような条件にウクライナは納得できるのだろうか。今後、欧州各国を中心に両者の関係改善に努めるのだろうが、先行きは厳しい。
私がこれほど心配するのは、トランプ大統領がすでに「停戦」を成し遂げたパレスチナのガザ地区のことがあるからだ。
実は、私はパレスチナには多少の縁がある。小泉内閣時代に首相の訪問に同行して以来、アラファト初代大統領や、アッバス大統領にも面会してきた。2013年には、ヨルダン川西岸の大統領府で、アッバス大統領から「エルサレムの星」勲章を受ける栄誉にあずかったこともある。日本でのアラブ諸国外交官の中心人物の一人であるシアム駐日パレスチナ大使とも長い付き合いだ。パレスチナには親日家も多く、私も個人でできる範囲で彼らを応援したいと考えている。
日本は、パレスチナとイスラエルの宗教的・歴史的な対立からは距離があり、小泉内閣時代に「平和と繁栄の回廊」構想を提唱し、独自の支援活動を続けてきた。農産加工団地の整備や、観光資産となる遺跡の保護事業など、パレスチナの経済的自立を促す極めて平和的な取り組みで、現地からの評価も高かった。少しずつ成果が出始めた中で、23年10月、ガザ地区で「事件」が起きた。
現在のパレスチナは、ヨルダン川西岸地域と地中海沿岸のガザ地区に分かれている。ヨルダン川西岸は、アッバス大統領が率いる主流派でイスラエルとの対話路線をとるファタハが掌握しているが、ガザ地区は対イスラエル強硬派のハマスが実効支配していた。このため、これまでにもイスラエルはたびたびガザ地区を攻撃し、ハマスはテロで対抗という状況が続いていた。私もテロは許すべきではないと思うが、ニュース映像で人質解放の名のもとに、学校や病院も攻撃され、多数の民間人が犠牲になる様子を見るのはいたたまれない思いだった。
そんな中で登場したのが、「イスラエル寄り」を公言するトランプ大統領だ。たしかにイスラエルに対する影響力は大きく、あっという間にハマスとの停戦合意にこぎつけた。大統領就任後には、すぐにイスラエルのネタニヤフ首相と首脳会談を行った。
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